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没落する米国の「断末魔のあがき」
国際刑事裁判所に対する米国の制裁が意味するもの
[2026.10.1]
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| オランダ・ハーグに本部を置く国際刑事裁判所 (ICC) |
| PHOTO(C)REUTERS |
イラン戦争で露呈した米軍の弾薬枯渇
今や持久戦の様相を呈し始めたイラン戦争は、米国にとって「国家の没落」を決定づける致命的な「悪手」となってしまった。
当初は「自国第一主義」を掲げ、「中東への不介入」を唱えていたトランプ政権であったが、国防総省からの強い要請に折れて、今年2月28日、トランプ大統領はイランへの武力介入に踏み切ったのであった。
現在米国においては、イラン戦争の長期化に伴って、米軍の弾薬在庫が危機的水準にまで減少している事が深刻な問題になっている。
とりわけ防空用や弾道ミサイル迎撃用の弾薬が枯渇しているという。
今年7月末、トランプ大統領は、極端な弾薬不足により対イラン作戦が停滞している事実を知り、ヘグセス国防長官に詰め寄ったと言われる。
年初来、ヘグセス国防長官は対イラン攻撃をトランプ大統領に進言していたが、当初「早期終結」を見込んでいたイラン戦争が予想外に長期化している為、トランプ大統領のヘグセス長官に対する信頼は失われた。
そうした矢先に「弾薬不足問題」が表面化してきた為、トランプは国防総省に対して大激怒しているのである。
また弾薬の枯渇に伴うミサイル不足の為、トランプが構想していた「第2次大戦以来最大規模のイラン攻撃計画」が見送られた。
ここ数カ月の間、トランプ大統領が「再び戦争状態に入るぞ」というイランに対する脅しを、繰り返し出しては引っ込めているのは、米国の弾薬庫が空になっている事が原因でもある。
イランとの戦闘開始から僅か1カ月で、米軍は850発以上のトマホーク巡航ミサイルや、計1000発超のパトリオットとTHAAD(終末高高度防衛ミサイル)を消費した。
さらに陸軍の地対地ミサイルATACMSも1300発以上使用された上、ウクライナからの供給要請も重なった為、米軍のミサイル備蓄は事実上ゼロに近い状態に落ち込んでいる。
こうしたミサイルの在庫枯渇により、ウクライナへの弾薬供給は困難となり、米軍内でも弾薬消費を節約せざるを得なくなっているという。
今や米軍のパトリオットミサイルの在庫は1000発を割り込み、THAADミサイルの在庫も250発程度にまで落ち込んでいるという。
こうしたミサイル不足は、米国の最大課題である「対中国有事」への即応体制に深刻なリスクをもたらすことになる。
こうした事態を招いた直接的要因は、イラン戦争の長期化・泥沼化であった。
何故米軍は長期戦になると負けるのか
今回のイラン戦争によって、米国の弾薬備蓄が「短期戦で枯渇する」という事実が露呈された。
実はこうした米軍の弾薬不足問題は、米国における防衛産業の構造的欠陥に由来するものである。
さらに言えば、それこそが「戦争を長引かせて長期にわたって儲けよう」という軍産複合体の思惑でもある。
まず米国の防衛産業は、「必要な物を、必要な時に、必要な分だけ」生産し、「在庫は最小限に」する事を不文律として兵器生産を続けている。
特に防衛産業の場合は、民間への一般販売は想定していない為、発注された分だけを作り、在庫は出来るだけ持たないように運営されている。
とりわけ弾薬やミサイルの類は、軍事演習の時に使用されるだけであり、平時においてはほとんど需要が無い為、量産体制はとっておらず、在庫も最小限に留められている。
需要の無い物を大量に作って在庫の山になれば、企業の赤字が膨らみ、経営が圧迫される為、「在庫は最小限に」する事が最も合理的なのである。
また工場の生産体制が大量生産に対応していない為、軍から突然大量に発注されても、即時納入は不可能である。
つまり米軍は、すでに在る在庫分の弾薬しか使えないのである。
そのため、米軍の軍事行動は「短期決戦」しか遂行できない仕組みになっている。
こうした事情により、第2次大戦以降、米国が勝利し得た戦争は全て「短期決戦」であった。
1983年のグレナダ侵攻、1991年の湾岸戦争、2003年のイラク戦争、2026年のベネズエラ侵攻は、いずれも米国が勝利し、戦勝パレードまでやった戦争であったが、いずれも数日から2カ月以内の短期戦闘によって終結している。
即ち、米軍の弾薬やミサイルの在庫が尽きる前に敵国を降伏させなければ、米国は勝てないという事である。
一方、ベトナム戦争やアフガニスタン戦争では、米軍は泥沼の長期戦に陥り、最終的には全兵力撤退を余儀なくされ、事実上の「敗戦」となった。
米当局は、ベトナムでもアフガニスタンでも、当初は短期決戦での「早期終結」を目論んでいた。
しかしながら早期終結のタイミングを失い、長期持久戦に引き摺り込まれた事によって、米軍は敗北の道を歩み始めたのである。
開戦から3カ月を経過する頃には、弾薬やミサイルの在庫が尽きてしまい、それ以降は「戦力の逐次投入」を繰り返すしかなくなった。
ベトナム戦争においてもアフガニスタン戦争においても、米国が敗れた最大の要因は、米軍が「戦力の逐次投入」戦略を続けてしまった事による。
「戦力の逐次投入」とは、必要最小限の兵力を少しずつ段階的に追加投入し、決定的な勝利を得られぬまま泥沼化する、という最悪の戦略であり「失敗の代名詞」でもある。
「戦力の逐次投入」の第1の問題点としては、決定的打撃力の不足が挙げられる。
一度に十分な兵力を集中せず、打撃を小出しにすることにより、敵軍や抵抗ゲリラなどに反撃の余裕を与え、各所で敗れる結果を招いてしまうのである。
「戦力の逐次投入」の第2の問題点としては、財政的消耗の長期化が挙げられる。
小出しによって「終わりなき増派」が続けられると、長期間にわたって膨大な軍事予算が垂れ流され、財政は圧迫され、やがて戦争の継続が困難になる。
このように「戦力の逐次投入」戦略は、戦争で敗れる典型的パターンなのである。
では何故、米軍は「戦力の逐次投入」戦略をやめられなかったのか。
それは、「戦力の逐次投入」戦略が、米軍の持つ構造的な宿命である為である。
そもそも平時においては、米軍は短期決戦に必要な分量の弾薬やミサイルしか用意していない。
その為、戦争が長期化すれば、米軍は新たに弾薬やミサイルを追加発注しなければならなくなる。
だが肝心の防衛企業は、弾薬やミサイルに関して量産可能な体制を敷いていない。
「少しずつ作って、少しずつ使わせ、戦争を長引かせて大儲けする」というのが、防衛産業のビジネス・モデルである。
米軍はやむを得ず、随時、追加供給される少量の弾薬を、その都度少しずつ使用する事によって、ダラダラと戦争を続けるしかないのである。
それが結果的に「戦力の逐次投入」という形になってしまうのである。
米戦略国際問題研究所は、米国が迎撃ミサイル「パトリオット」の現在の在庫を、イラン戦争開始前の水準に戻すには、2029年までかかると計算している。
つまり、半年で使ったミサイルを、元の分量に戻す為には3年も要するというのである。
弾薬やミサイルに関して、米国の生産力は所詮この程度なのである。
また少量生産の為、価格も超高額となり、ロッキード・マーチン社が製造する「パトリオット・ミサイル」の価格は、既存の主力モデル「PAC-3 MSE」が、1発あたり約400万ドル(約6億円)もする。
迎撃ミサイルを1発撃っただけで、国民の血税の6億円分が吹っ飛ぶことになる。
このように「戦力の逐次投入」戦略は、米国の防衛産業の構造的問題によってもたらされた必然的な選択に他ならないのである。
かくして、ベトナムにおいてもアフガニスタンにおいても、米軍は敗北に敗北を重ね、最終的には全兵力を撤退させざるを得なくなった。
米軍の数多くの戦死者達は、アーリントン国立墓地に「自由の戦士」として埋葬された。
しかしながら、戦争の長期化のおかげでボロ儲けをして笑いが止まらないのが、米国の防衛産業すなわち軍産複合体である。
一方、敵対国である中国、ロシア、イラン、北朝鮮などは、常に挙国体制あるいは準戦時体制で兵器生産に総力を挙げている。
挙国体制で兵器生産に取り組む国の場合は、国家が兵器工場そのものを直接運営する為、在庫の心配などせずに量産体制が敷かれ、大量生産・大量調達が可能になる。
このように「最大限に生産し、必要以上に供給できる」のが、挙国体制の防衛装備の特徴である。
さらにそうした軍隊は、かつてナポレオンが実践したような「戦力の集中投入」戦略が可能となる為、常に勝利し続けるのである。
「戦力の逐次投入」が必敗の戦略であるのに対し、「戦力の集中投入」は必勝の戦略である。
この事は、米国が挙国体制の国家を相手にすれば、絶対に勝てない事を意味する。
因みに、米国が「長期戦」において勝利し得た唯一の事例は第2次世界大戦であった。
第2次世界大戦当時の米国は、ニューディール体制によって全体主義的な「挙国体制」を強行し得た例外的な時代であり、兵器の大量生産・大量調達が実現されていた。だからこの時だけは勝てたのである。
しかしながら、現在のように膨大な債務を抱えている米国で、今後そのような統制主義的な生産体制を再び構築し得る可能性は皆無である。
今日においては、たとえ米軍の軍事能力が高くても、弾薬備蓄が乏しいが故に、敵対国に大きな損失を加えられるのは開戦後1~2カ月程度に過ぎない。
敵対国は、「戦争の長期化につれて、米軍の打撃力が急速に低下し、自国に有利になる」との明確な計算が立てられる。
「開戦直後の短期間の損害に耐えれば、後は消耗戦で米国に必ず勝利できる」というメカニズムが分かれば、敵対国は必ず米国を長期持久戦に引き摺り込もうとするだろう。
今後イラン戦争は間違いなく長期化し、最終的にイラン側の勝利に終わる事が予想される。
そしてイラン戦争で敗北した米国は、確実に弱体化し、国内は分裂し、弱小国への道を歩むであろう。
かくして中国に対抗し得る唯一の存在は、地球上から消滅する。
米国が今後「国家の没落」を回避する為に残された唯一の道は、一方的に「勝利宣言」をして、全兵力を中東地域から即時撤退させる以外に無いのである。
米中の力関係が完全に逆転する歴史的瞬間
米国が弾薬不足に陥った事により、今や西側の欧州諸国でも弾薬不足問題が波及している。
現在、ロシアと交戦中のウクライナに対する弾薬供給も途絶え、ウクライナは苦境に立たされている。
一方、ロシアはこれまでを上回る量の弾道ミサイルや超音速ミサイルをウクライナの首都キーウ市街に撃ち込んでいる。
以前であれば、ウクライナはそうした攻撃のほとんどを迎撃ミサイルで阻止してきたのであったが、今では深刻な「弾切れ」状態に陥り、やられるがままである。
米国と同盟関係にはない中立国のスイスの場合は、米国に発注済みの「パトリオット」の納入が最長で7年遅れると予想されている。
スイスと同様に米国と同盟関係ではない台湾当局は、何年も前に米国に注文した「パトリオット」102発分が、今年中に届くかどうか心配しているという。
しかも現在の米国は、イランを相手に半年ほど戦っただけで弾薬不足に陥っている状況にある。
このような状態で、もし米国が大国の中国と戦うことになれば、果たしてどうなるのか。
米シンクタンクのヘリテージ財団がまとめた研究レポートによれば、米中が戦争になった場合、米軍は在庫の迎撃ミサイルを数日で撃ち尽くし、日本とグアムの米軍基地は使用不能になるという。
一方、中国のミサイルは、太平洋は言うに及ばず、米国全土の大半を射程に入れている。
ヘリテージ財団の見立てでは、米国が人民解放軍の攻撃から自国を守る為には、迎撃ミサイル「パトリオット」が1万9千発以上必要になるという。
それは米国が現在保有するパトリオットの在庫の20倍を超える数であり、およそ現実的ではない。
ミサイルの「迎撃」が事実上不可能ということになれば、「先制攻撃」しか手段が無くなる。
しかしながら、米国が中国本土を攻撃する場合、中国の防空網を突破しなければならないことに加え、大きな問題がある。
先ず、中国本土への攻撃は、必ず米国本土への「報復攻撃」を招くという問題がある。
しかも中国のミサイル基地は、通常兵器のミサイルのみならず、核搭載の大陸間弾道ミサイルも併せて配備している為、もし米軍がその基地を叩いた場合には、核攻撃の応酬、即ち「全面核戦争」へと発展する恐れがある。
ヘリテージ財団の予測はここまでであるが、これらを総合的に判断すれば、米国が中国への本土攻撃に踏み切る可能性はほぼゼロであるという結論になる。
またそれは、「米国は中国には勝てない」という事を意味する。
現在米国は、F22の後継機となる第6世代の最新型戦闘機F47を開発中であるが、たとえどれだけ素晴らしい最新兵器があろうと、弾薬やミサイルが無ければ、それらは全て「張り子の寅」に過ぎないのである。
さらにこうした米軍の弱体化は、中国の台湾侵略を誘発するだろう。
そして米中開戦となれば、米国が敗北する確率が極めて高い。
そもそも長期戦に持ち込まれたら必ず負ける米国が、持久戦を得意とする中国を相手に勝てるはずが無いのである。
一方、中国の習近平国家主席は人民解放軍に対し、2027年までに「台湾解放」が可能な軍事能力を整えるよう指示している。
10年前とは桁違いに科学技術力を進歩させている中国は、すでに第6世代戦闘機や空母の配備を進め、核戦力も急拡大させている。
おそらく中国は2027年か2028年には台湾侵攻に踏み切るものと予想される。
なぜなら、米国第一主義のトランプ政権が、同盟国でもない台湾の為にわざわざ極東まで米軍を派遣する可能性は皆無だからである。
しかもイラン戦争の為に、米軍は「弾薬不足」という深刻な事態に陥っている。
ありとあらゆるシミュレーションにおいて、「台湾有事」に米国が介入する事は不可能なのである。
中国にとっては、トランプ政権の残り2年間が、「台湾解放」を実現し得る千載一遇の好機となる。
さらに「台湾解放」は、米中の力関係の完全な逆転を象徴する歴史的瞬間となるであろう。
「台湾有事」への不介入によって、米国は西側諸国からの信用を失墜させると同時に、「米国の没落」が決定的に印象づけられる事となる。
一方、台湾を占領して「太平洋への出口」を確保し得た中国は、それ以降、本格的に太平洋全域の支配へと乗り出す事が可能となる。
19世紀末、米国海軍出身の地政学者アルフレッド・マハンが「太平洋を制する者は世界を制する」と唱えると、米国はそのテーゼに従って太平洋の支配に乗り出し、20世紀に世界を制するに至った。
そして21世紀には、世界征服を目指す中国が、「太平洋支配に向けた橋頭堡」として台湾占領計画を進めている。
習近平が常に台湾占領に固執し続けてきたのは、決して小さな台湾島が欲しいからではなく、「太平洋を制し、世界を制する」ための第一歩であるという事を知らねばならない。
米国による国際刑事裁判所への制裁
我々は今、無法で予測不可能な世界に生きている。
米国のトランプ大統領は、既存のルールを破り続ける事によって熱狂的支持者達からの喝采を得てきた。
そしてその都度、世界は無秩序へと向かっているようである。
2026年8月18日、米合衆国財務省外国資産管理局は、「大統領令14203号」に基づき、オランダのハーグに本部を置く国際刑事裁判所(ICC)の赤根智子所長とセネガル出身の上級法廷弁護士アブドゥライェ・セエ氏の2人に対し、制裁措置を発動した。
米国政府は、イスラエルのネタニヤフ首相への逮捕状発行や米兵の戦争犯罪を巡る捜査などを理由に、国際刑事裁判所を「米国の主権に対する脅威」と位置づけ、今回の制裁措置に至ったのである。
国際刑事裁判所の任務は、集団殺害(ジェノサイド)犯罪、人道に対する罪、戦争犯罪に関わる個人を訴追することである。
国際刑事裁判所には、これまで日本から齋賀富美子(任期2007~2009年)、尾崎久仁子(任期2009年~2018年)、赤根智子(任期2018~2027年)の3名の判事を出してきた。
なお赤根智子判事が、日本人として初めて国際刑事裁判所所長に就任したのは2024年3月である。
そして今回、国際刑事裁判所所長である日本人女性が、同盟国の米国から制裁を受ける事になったのである。
国際機関の現職トップが、同盟国から制裁を受ける事態は極めて異例である。
米国が赤根所長に課した制裁は、国際金融システムを利用する権利を奪い、日常生活を困難にする事であった。
かくして赤根所長の米国における資産は凍結され、米国の個人・企業との取引は原則として禁止され、ドル決済網からも完全に遮断された。
現在、資産を凍結された赤根所長は、クレジットカードも使えない状態にあるという。
皮肉な事に、これまで国際刑事裁判所が独裁者や戦争犯罪者達に対して課してきた金融制裁が、今や国際刑事裁判所に対して適用されているのである。
今回の米国による国際刑事裁判所への制裁措置によって赤根所長らは少なからず被害を蒙っているが、本当の被害者は、大規模な残虐行為に晒されている世界中の人々である事を忘れてはならない。
赤根所長は、8月26日に記者会見し、「出来る限り抵抗する。ICC(国際刑事裁判所)は決して負けない。制裁を受ける理由は全く無い」と反論した。
また赤根所長は、日本には「法の支配を守り抜く努力をしてほしい」と訴えた。
EUをはじめ欧州諸国は、今回の米国による国際刑事裁判所への制裁措置を厳しく批判している。
そこで日本の高市首相が、果たして国際社会の舞台において責任を果たし得る人物であるのかどうかが、世界中から注目された。
赤根所長が訴えたように、「法の支配を守り抜く努力」をする覚悟が、果たして高市首相にあるのか否かが問われたのである。
しかしながら高市首相は、重要な国際機関の日本人所長(しかも女性)が不当な制裁圧力を受けているにも関わらず、記者会見において「大変残念に思っている」と繰り返すだけで、米国やトランプ大統領を一切批判しなかった。
日本の国家としての価値観と信念を全世界に向けて明確に示すべき機会において、首相がこのような発言しか出来ない事こそ、大変残念に思わざるを得ない。
自国通貨「円」の価値をベッセント財務長官に丸投げして決めてもらったり、ヘグセス国防長官から言われるがままに型落ちのガラクタ兵器を何兆円分も買わされるなど、米国政府にとって高市首相は、ホワイトハウスの意のままに動く便利な売国政治屋に他ならない。
高市首相本人はトランプ大統領と心中する気かも知れないが、日本国民までが巻き添えにされるわけにはいかないのである。
古来より日本などにおいては、「もし悪政を行えば、天から災いが下り、最終的には国を失う」と考えられた。これは「天人相関説」と呼ばれ、地震、洪水、旱魃などの自然災害は単なる自然現象ではなく、「天が悪政に対して下した警告や怒り」であるとされた。
「日本の歴史・伝統・文化を守る」などと自称する高市首相が、本当に先人達の思想を尊重しているのであれば、最近の全国各地における数多くの洪水被害を、己の悪政に対する「天の警告」と受け止めて謙虚に反省すべきであろう。
ポピュリズムの標的にされた国際刑事裁判所
国際刑事裁判所とトランプ政権の対立は、「普遍的管轄権」をめぐる立場の衝突に起因する。
「普遍的管轄権」とは、ジェノサイドや戦争犯罪などの極めて重大な国際犯罪に対し、犯罪地や容疑者・被害者の国籍に関係なく、どの国の国内裁判所でも捜査や訴追ができるという国際法の原則である。
因みに国際刑事裁判所の加盟国は、日本を含め125カ国であり、国際社会においては大半の諸国家が国際法を尊重している。
ただし、米国、中国、ロシア、イスラエルなどは、国際刑事裁判所に加盟していない。
一般に「国際法は国家主権に優越する」との原則が現在の国際社会のルールであるが、国際刑事裁判所に加盟していないこれらの国々は、あくまで「国家主権は国際法に優越する」という19世紀的国家観に固執しているのである。
自国第一主義は、何もトランプだけの専売特許ではない。
未だに旧態依然たる自国中心の国家観を引き摺っている中国、ロシア、イスラエルなどは、米国よりも遥かに自国第一主義を体現している国家であり、これまでも国際法や国際組織などを無視し続けてきた。
米国は戦後80年間にわたり国際法の守護者であったが、トランプ政権の登場によって19世紀的国家観へと回帰し、国際的孤立の道を歩もうとしているところである。
国際刑事裁判所とトランプ政権との確執が生じたのは、第1次政権の2017年で、国際刑事裁判所主任検察官がアフガニスタン戦争における米軍やCIA職員の捕虜虐待・拷問について捜査開始を要請した事が直接の契機であった。
これに対しトランプ大統領は、国際刑事裁判所職員に対する査証発給停止や米国内資産の凍結を可能にする大統領令を出し、主任検察官らを制裁対象に指定した。
また当時のジョン・ボルトン米国家安全保障担当大統領補佐官は、「国際刑事裁判所は死んだも同然。米国の主権を侵している」と批判した。
さらに2020年3月、国際刑事裁判所は、アフガニスタン紛争に関する米軍の戦争犯罪疑惑について捜査を進める判断を下したが、この時もトランプ政権は猛反対し、国際刑事裁判所職員に制裁を科した。
しかしながら、2021年にバイデン政権が発足すると、米国の国際刑事裁判所に対する制裁は全て解除された。
その後、2022年3月、ロシアのウクライナ侵攻に伴う「戦争犯罪」および「人道に対する犯罪」について、国際刑事裁判所はプーチン大統領とマリア・リボワ・ベロワ大統領全権代表に逮捕状を出した。
これにロシアは反発し、ロシア内務省は、逆に国際刑事裁判所のカーン主任検察官を指名手配した。
一方、バイデン政権の米国は、国際刑事裁判所によるロシア当局に対する逮捕状発行を大いに歓迎し、超党派で情報提供するなど、国際刑事裁判所に対して米国は協調姿勢を示していた。
しかしながら2024年の米大統領選においてトランプが勝利すると、再び米国と国際刑事裁判所との対立構図は復活した。
米大統領選直後の2024年11月21日、国際刑事裁判所はイスラエルのネタニヤフ首相やガラント前国防相らに対して、戦争犯罪容疑で逮捕状を発行した。
この事が、米国と国際刑事裁判所との対立を決定づけた。
ガザ紛争に関しては、イスラエルは国際刑事裁判所に加盟していないが、パレスチナは加盟しており、国際刑事裁判所が管轄権を有する要件は満たされていた。
国際刑事裁判所発行の逮捕状に対し、ネタニヤフは「馬鹿げた告発だ」と一蹴した。
ネタニヤフは、テロ組織のハマスを「国家」と同一視するのは問題であり、イスラエルの自衛権を否定するものだと批判した。
なおこの事は、米政権内のみならず米議会の超党派からも「国際刑事裁判所の越権行為」と非難されるようになり、米国と国際刑事裁判所との確執は、「国際刑事裁判所解体」を視野に入れた全面戦争へと発展するに至った。
米国のルビオ国務長官は、「国際刑事裁判所は腐敗し致命的なまでに政治化された超国家的裁判所であり、権限を悪用し、付託された任務を逸脱してきた。トランプ政権の立場は明確で、我々は国家主権に対する国際刑事裁判所の攻撃を容認しない」との声明を発表した。
さらにルビオ長官は、「必要とあればトランプ政権は、国際刑事裁判所を組織的に解体するための追加措置を講じる用意がある」などと通告した。
国際機関に対してこれほどまでに悪態をついた国家が、かつて存在しただろうか。
現在の米トランプ政権に比べれば、中国政府でさえ紳士的に見えてくる。
ポピュリズムに徹したトランプ政権にとって、国際刑事裁判所は格好の標的であった。
そして今回の赤根所長らへの制裁措置は、11月の米中間選挙を前に、トランプ政権が国内の親イスラエル勢力であるキリスト教福音派をはじめ、ユダヤ系の支持者獲得を意識した動きでもあった。
今や米国もロシアも、国際刑事裁判所に従う意思など全く無く、むしろ国際刑事裁判所に何か手出しをされたら、報復措置で対抗するという姿勢をとっている。
国際刑事裁判所の存在意義とは何か
すでに述べたように、2022年3月には、国際刑事裁判所はロシアのプーチン大統領に対して逮捕状を発行している。
しかしながら2024年9月、プーチンがモンゴルを訪問した際、モンゴルは国際刑事裁判所の加盟国であるにも関わらず、プーチンを逮捕しなかった。
本来、国際刑事裁判所の加盟国であれば、同裁判所の逮捕状が発行された人物を逮捕する義務があるのだが、モンゴルはあくまでロシアとの友好関係を優先させたのであった。
またモンゴルは、ロシアからの報復を恐れたという理由もあるだろう。
かりにモンゴルが、国際刑事裁判所の要求通りにプーチンを逮捕した場合は、ロシアから凄まじい報復制裁を受ける事は間違いない。
しかもモンゴルがロシアから激しい制裁を受けたとしても、国際刑事裁判所がモンゴルに対して何か損失補填をしてくれるわけではない。
そうであるならば、モンゴルとしては国際刑事裁判所など無視した方が遥かに「国益」になると判断するようになるのは当然であり、一概にモンゴルを非難するわけにはいかない。
このように国際刑事裁判所が出す「逮捕状」の実効性は、現場においては加盟国の都合次第という頼りないものなのである。
だからと言って、国際刑事裁判所が無意味な存在だと決めつけるのは早計である。
国際刑事裁判所は、大規模な残虐行為をする戦争犯罪者達に対抗し得る数少ない法的手段である。
この地球上に国際刑事裁判所が存在する事が、世界各地で迫害されている人々にとっての希望の綱となっている事は間違いない。
もし国際刑事裁判所が無力で実効性に乏しいのであれば、それを廃止したり解体するのではなく、むしろ実効性を持たせるように変えてゆくべきであろう。
一方、米国のトランプ大統領は、「そもそも国際刑事裁判所は存在すべきでない」との立場から、国際刑事裁判所を制裁し、最終的には解体しようと企図している。
同様に、ロシア、中国、イスラエルなど国際刑事裁判所への未加盟国は、「国際刑事裁判所は存在すべきでない」との見解で一致している。
なぜならそれらの国々は、いずれも「戦争犯罪国家」あるいは「ジェノサイド国家」であるからである。
ウクライナ戦争において戦争犯罪を繰り返すロシア、チベットや新疆ウイグル自治区においてジェノサイド政策を遂行する中国、ガザ地区のパレスチナ人に対しで「民族浄化」と戦争犯罪を続けているイスラエルなどにとっては、国際刑事裁判所の存在そのものが迷惑なのである。
「戦争犯罪国家」や「ジェノサイド国家」にとって「存在すべきでない」とされる組織は、逆に世界にとっては存在すべき組織であると見なければならない。
国際刑事裁判所を廃止する事は、この世界を戦争犯罪者にとって「やりたい放題の場所」にしてしまう事を意味する。
ロシアによるウクライナ侵攻のような重大な戦争犯罪の責任を追及したり、少数民族に対する残虐犯罪を処罰する国際機関が、この世界には絶対に必要なのである。
国際刑事裁判所の解体を目論む米国のトランプ政権は、世界を無秩序状態に陥らせるだけである。
今やイラン戦争は、終わりの見えない泥沼戦の様相を呈しており、今後の米国は間違いなく世界の覇権国の地位から転落してゆく事になる。
頂点から転落する大国の指導者は、正常な精神状態を維持できない為、これからも予測不能な事を次から次にやらかす可能性が高い。
国際法や国際秩序の破壊に向けて暴走を始めたトランプ大統領の狂気は、まさに没落する米国の「断末魔のあがき」に他ならないのである。
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