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「帝国主義宣言」としてのドンロー・ドクトリン

地球規模の「世界戦国時代」の幕開け

[2026.2.1]



米当局によって連行されるベネズエラのマドゥロ大統領
PHOTO(C)LEUTERS


「法が支配する世界」の崩壊



 歴史上、帝国の支配者が一度「反転」を指示した場合、想定を遥かに超えるペースで帝国が崩壊してしまうことが多い。

 体制が巨大であればあるほど、一旦「反転」を始めたならば体制は制御不能に陥り、結果として崩壊に至るのである。

 1980年代、ソビエト連邦の最後の指導者であったゴルバチョフは、ペレストロイカを唱えて硬直化した既存体制の改革を断行したが、その結果として、ソ連邦そのものが崩壊した。

 同様に、この数十年間、米国が「世界の管理人」として担ってきた役割から退却し、180度の方向転換をした事によって、世界全域において制御出来ない事態が生じつつある。

 現在、この世界が直面しているのは、「法が支配する世界」の崩壊である。

 世界から「法の支配」が失われ、「力が支配する世界」へと大転換が始まった。

 現在の世界は、10年前とは全く違う世界である事を知らなければならない。

 2026年は、米国のトランプ政権によるベネズエラ攻撃で幕を開けた。

 1月3日、米軍はベネズエラを軍事攻撃し、マドゥロ大統領の身柄を拘束して米国へ送致した。

 米国のベネズエラ攻撃は、2025年12月に米国政府が発表した「国家安全保障戦略」に示された理論の実践であり、西半球で米国の覇権を確立しようとするトランプ政権による「帝国主義宣言」の表明でもあった。

 米軍がベネズエラでニコラス・マドゥロを拘束した数時間後、ドナルド・トランプ大統領はこう宣言した。

「モンロー・ドクトリンは重要なディールだが、我々はそれを大差で凌駕した。これは今、ドンロー・ドクトリンと呼ばれている」

「ドンロー」とは、ドナルドとモンローとを組み合わせた造語である。

「ドンロー・ドクトリン」(トランプ版モンロー主義)とは、超大国の「勢力圏」に分割された世界秩序を目指すという「帝国主義宣言」である。

 米国が、ベネズエラのマドゥロ大統領を殺害することなく、「拘束して米国の法廷で裁く」という措置を執った事には非常に重要な意味がある。

 米当局は、今回の米軍のベネズエラ攻撃と大統領の身柄拘束を、「軍事行動ではなく法の執行である」と言明した。

 そしてその事は、ベネズエラという国家の「主権」はすでに存在しない、という宣言でもあった。

 これにより、「米国の法律を犯した者は、他国の元首であっても米国内法で裁かれる」という、新しい法理論が成立したことになる。

 それは今後、米合衆国の「国内法」が西半球全体に適用される事を意味する。

 そして中小の国々の国家主権は否定される。

 米国は、かつてのように気に入らない指導者を殺害するのではなく、他国の国家元首の身柄を拘束して米国内法で裁く事によって、「新しい世界の法」の在り方を全世界に見せつけたのである。

「新しい世界の法」とは、帝国主義のルールである。

 このように世界のルールが変更されれば、いずれは中華人民共和国の国内法がアジア全体に適用され、またロシアの国内法が欧州全体に適用されることになるであろう。

 今回の米軍によるベネズエラ攻撃は、国家主権と国際法の尊重を基盤とした国際社会の秩序を根底から揺るがせた。

 それは、「ドンロー・ドクトリン」の下でのアメリカ・ファースト政策が如何なるものであるかを世界に示した。

 すでに世界は、「法の支配」から「力の支配」の世界へと逆行を始め、力によって国際法の原理原則さえ変更される世界へと変貌したのである。

 トランプ米政権は、グローバリズムを徹底排除して、自国第一主義を貫徹しようとしている。

 2026年1月7日、トランプ大統領は「米国の利益に反する」との理由で、66の国際機関や協定からの脱退を指示した。その中には、国連貿易開発会議(UNCTAD)なども含まれる。

 さらに現在、トランプ大統領は、デンマーク領グリーンランドの領有に強い意欲を示し、欧州の同盟諸国との確執を生み出している。

 トランプ米政権によるこうした行動は、世界における米国の信頼性を低下させ、同盟諸国による「米国離れ」を加速させることになるだろう。

 しかしながらそうした事は、トランプ政権の米国にとっては痛くも痒くもないのである。

 米国の関心は、あくまで「西半球を支配する事」であって、それ以外の世界に関与する気など全く無いからである。

 米国のEUへの対応を見ても明らかなように、今や米国にとって「同盟国」などは重荷でしかないのである。



米露による「南米」と「欧州」の交換



 一方、ウクライナに侵攻したロシアのプーチンにとっては、トランプ政権との間で、米露それぞれが自国の「勢力圏」を相互承認して「手打ち」をする好機が到来した状況でもある。

 プーチン政権はウクライナ侵攻以前から、「ロシアはラテンアメリカから手を引く代わりに、ヨーロッパにおける自由裁量権をロシアに認めてほしい」という取引を米国に打診していた。

 米国に対して、南米と欧州との「交換」を最初に持ち掛けたのは、実はロシアのプーチンであった。

 2019年、米連邦議会においてフィオナ・ヒル氏は、「ロシアがベネズエラから手を引いて米国のベネズエラ支配を認める代わりに、米国はロシアのウクライナ支配を認めてもらいたい」とロシアが非公式に取引を求めている事を証言した。

 フィオナ・ヒル氏は、第1期目のトランプ政権時代に米国の国家安全保障会議でロシア・ヨーロッパ担当を務めた人物である。

 ヒル氏によると、当時(2019年)の駐米ロシア大使アナトリー・アントーノフ氏が、ヨーロッパでの勢力圏と引き換えにベネズエラでの影響力を米国に譲る意向を、何度も示唆していたという。

 なお第1期目のトランプ政権は、こうしたロシア側からの働きかけには関心を示さなかった。

 しかしながら、第2期目のトランプ政権において、米国とロシアの間で、互いの勢力圏を交換する「密約」が成立した可能性は高い。

 ウクライナ侵攻の前と後とでは、ロシアに対するトランプの対応は全く異なるのである。

 米露間で「密約」が成立していたとすれば、今回のベネズエラ攻撃についても、米国当局がロシア側に事前通告をしていた事は間違いない。

 その証拠にAP通信は、ベネズエラのマドゥロ大統領が米軍に拘束される前に、すでにロシアの外交官家族がベネズエラから避難していた事実を報じている。

「ベネズエラとウクライナとの交換」といった密約は、決して荒唐無稽な話ではない。

 当事国を無視した大国同士の取引は、帝国主義時代には当たり前のように行われていた「商慣習」であった。

 例えば1905年の「桂・タフト協定」においては、日本と米国との間で、「朝鮮は日本が支配し、フィリピンは米国が支配する」と、日米双方の勢力圏が確定された。

 そこでは、肝心の当事者であるはずの朝鮮やフィリピンは完全に「蚊帳の外」に置かれ、日米の二国間同士の交渉だけで朝鮮やフィリピンの運命が決定された。

 また1938年の「ミュンヘン会談」では、チェコスロバキアのズデーテン地方のドイツへの併合の是非が、独伊英仏の4カ国の首脳会談だけで決定され、最も重要な当事者であるチェコスロバキアは会談に呼ばれる事すら無かった。

 このように帝国主義時代においては、当事国の了解なしに、大国同士の交渉だけで、小国の運命が決められる事が当然のように行われていたのである。

 大国による世界分割は、大航海時代の1494年に、スペインとポルトガルが締結した「トルデシラス条約」からすでに始まっていた。

 トルデシラス条約は、大航海時代における世界の分割に関する条約で、西経46度37分の子午線を境界線として、その東側をポルトガル、西側をスペインの勢力圏と定め、世界を2分割したものであった。

 こうした帝国主義の時代においては、「大国の勢力圏が安定を生む」という考え方が普遍的に受け容れられていた。

 ただしそれは、世界に「主権国家」の概念が未だ無かった時代の論理である。

 少なくとも現代世界のように、たとえ小国であっても「主権国家」の権利が尊重される国際法に基づく世界秩序において、覇権国家による世界分割を正当化する論理は存在しない。

 しかしながら米国のトランプ政権は、2025年12月に発表された「国家安全保障戦略」の中で、大国がその周辺領域において巨大な影響力を持つ事を、「国際関係における不変の真理」であると宣言したのである。

 米国の2025年版「国家安全保障戦略」は、世界を覇権国の「勢力圏」に分割する事が、世界の「戦略的安定」になると論じている。

 2025年版「国家安全保障戦略」は、同盟諸国やグローバルサウス諸国など中小の諸国の国家主権や国益を完全に無視し蹂躙する内容であって、およそ時代錯誤も甚だしい。

 それは言い換えれば、強大な力を持った覇権国が周辺諸国で勝手放題に振舞うことが出来るような世界を目指したものである。

 そして現在のトランプ政権は、その通りに実践している。

 こうした米国の2025年版「国家安全保障戦略」は、ロシアや中国のような覇権大国にとっても好都合な理論である。

 今後の世界秩序は、ベネズエラを含めた西半球は米国の勢力圏にする一方で、ウクライナなど周辺の旧ソ連諸国はロシアの勢力圏である事を相互承認し合う展開になるであろう。

 4年前にウクライナ侵攻を開始したプーチンには、再びソ連邦時代のような「東側勢力圏」を復活させたいという悲願がある。

 バイデン政権当時、米国はプーチンが望む「東側勢力圏」の復活には一切応じなかったが、昨年の第2次トランプ政権発足で流れが変わった。

 さらに年明け早々の米国によるベネズエラ攻撃により、ロシアが望む「東側勢力圏」構想が現実味を帯びてきたと言える。

 2025年版「国家安全保障戦略」において、米国政府は西半球における米国の覇権を宣言した。今回のベネズエラ攻撃は、この新戦略に基づく行動であった。

 そして米国の2025年版「国家安全保障戦略」が示した世界観は、「東側勢力圏」の復活を目指すプーチンの世界観とも完全に合致しているのである。



米中による「西半球」と「アジア」の交換



 帝国主義的な「世界分割」の動きは、アジアにおいても進行中である。

 今や「西半球支配権」と「アジア支配権」との交換が、米国と中国との2大国の間で取引されようとしている。

「台湾統一」を目指す中国にとって追い風となるのが、2025年12月に米国政府が発表した「国家安全保障戦略」であり、2026年1月の米軍によるベネズエラ攻撃であった。

 もし「台湾侵攻の際に在日米軍は動かない」と、中国当局が確信を持てば、中国軍による台湾侵攻は秒読み段階に入ることになる。

 そうした中で米国のベネズエラ攻撃は、中国に台湾侵攻へのお墨付きを与えてしまう事になった。

 たとえ中国軍が台湾を攻撃して頼清徳総統を拘束しても、米国はそれを認めざるを得ない立場にある。

 米国のベネズエラ攻撃は、むしろ中国による台湾侵攻の正当性を後押しする要因になるであろう。

 米国が「自国ファースト」で行動している以上、中国が「自国ファースト」で行動しても、米国にそれを非難できる資格は無い。

 また今や「西半球」にしか関心が無い米国にとって、「同盟国」などは重荷でしかなく、EUのみならず日本も「お荷物」以外の何物でもないのである。

 ましてや同盟国ですらない台湾に至っては、トランプの眼中にも無いであろう。

 中国は、12月29日と30日に、台湾を取り囲む形で大規模な軍事演習を実施した。

 これは、中国の習近平の「台湾統一」への本気度を示している。

 今回の軍事演習は、台湾の主な港湾の占領や海上封鎖を想定したもので、台湾国防部によれば、中国軍機207機が台湾周辺で確認され、その内、延べ125機が「休戦ライン」である中間線を越えたとされる。

 さらに演習にはドローンなどの無人機も多数投入され、台北市の中心部を無人機が飛行する映像も確認されている。

 この事は、いつでも台北への空爆が可能である事を示している。

 そのような中国が本格的に「台湾統一」に動き出すのは、2027年の可能性が高い。

 2027年は、中国人民解放軍が創設100年の節目を迎え、習近平自身も、秋に中国共産党総書記として4選がかかる党大会を迎える。

 さらに、2028年1月に実施される台湾総統選挙に向けて、台湾国内で本格的な選挙戦が始まるのも2027年である。

 これまでにも中国は、再三にわたり台湾侵攻を視野に入れた実戦的な演習を繰り返してきたが、とりわけ重要なのが過去に3回あった。

 2022年8月には、初めて「台湾を包囲」する形での演習を実施した。

 2024年5月には、2022年8月よりも演習の海域を拡大し、「台湾の全面包囲」が可能である軍事能力を誇示した。

 さらに2024年10月には、「台湾の主な港湾を制圧」する演習を実施し、基隆、台南、高雄、花蓮、台東といった港湾都市の沖合いに艦船を並べ、物流を封鎖する演習を繰り返した。

 そしてその集大成とも言えるのが、今回の2025年12月の大規模軍事演習であった。

 あとは、在日米軍や自衛隊の動きを封じる演習と、3隻目の空母「福建」が実戦配備されたら、台湾侵攻への準備は完了する。

 すでに帝国主義の世界へと変貌した現代世界においては、「勢力圏」が大国間の取引で「交換」される「商品」にされてしまっている事が、日本や台湾のような中小の国々にとっては深刻な問題と言えるだろう。



帝国主義の価値観とは何か



 帝国主義にとって必要な「徳目」とは、「より多く利権を獲得し、より広く領土を拡張する事」であって、イデオロギーや大義名分などは一切不要である。

 政治理念やイデオロギーなどよりも、「自国の利益」を最優先させる事、即ち「自国第一主義」を貫徹する事こそが、帝国主義時代の政治家に要求される「徳目」なのである。

 そうした意味では、トランプが常に唱えてきた「アメリカ・ファースト」のスローガンは、帝国主義の「徳目」に他ならない。

 相変わらず国際情勢に疎い高市首相は、米国のベネズエラ攻撃に際して「ベネズエラの民主化が望まれる」などと的外れなコメントをしていたが、政治家としては不適格者と言わざるを得ない。

 米国が他国の「民主化」の為に戦う時代など、とっくの昔に終了したのである。

 以前からトランプ大統領は、従来の歴代政権が「我々の税金を遠く離れた砂漠の民主化の為に使い、米国境や道路を放置してきた」と批判し、MAGA支持層に訴えてきた。

 そのためトランプ大統領は、今回のベネズエラ攻撃についても、「これはベネズエラを民主化するためではない。我々の生活を脅かす麻薬と移民の元凶を取り除き、盗まれた石油を取り戻すために行くのだ」と主張した。

「民主化」の為などではなく、あくまで「米国と米国民の利益」の為に戦ったのだという事をアピールした方が、今日の米国民とりわけMAGA支持層には受けが良いのである。

 トランプ大統領やMAGA支持層にとって、「国益」とは、理念でもなければイデオロギーでもなく、「物質的な利益」以外の何物でもないのである。

 理想よりも実利を重視するこうした価値観は、決してトランプだけの思想ではない。

 トランプよりもむしろ一般の米国民が、実利主義を切望し、帝国主義的な価値観に期待を寄せているのである。

 その根底には、かつて米国が掲げてきた「民主主義の守護者」であるとか「世界の警察官」といった美名に対する強い疑念と反感が、多くの米国民の中に存在している。

 これまで米国では、「民主主義の輸出」や「世界の民主化」の大義の下、一般の米国民には多大な負担ばかりが押し付けられてきた。

 今から約20年ほど前には、米国政府はネオコン主導によってイラク戦争やアフガニスタン戦争を引き起こしてきた。

 当時は「民主主義の輸出」が米国の大義であり、イラクやアフガニスタンを「民主化」する事が正義であると唱えられていた。

 しかしながら、米国はイラクやアフガンにおいて多大な犠牲を払ったにも関わらず、一般の米国民には何の見返りも無く、それどころか戦時債務のツケが増税などの形で米国民の負担として課せられるだけであった。

 また戦場で負傷した兵士達が薬物中毒になったり、PTSDに陥ったとしても、政府からの救済策は微々たるものであった。

 そうした矢先にリーマンショックが発生し、米国のみならず世界中に大不況がもたらされた。

 さらにその結果、第三世界から大量の不法移民が先進諸国に流入してきた。

 とりわけ米国への不法移民流入は深刻で、米国社会における国民分断の原因となった。

 今や大多数の下層の米国民にとって、「民主主義の守護者」であるとか「世界の警察官」などといった美名は、偽善と欺瞞に満ちた呪いの言葉と化している。

 トランプのような帝国主義的なポピュリズム政治家を生み出し、それを支えているのは、こうした多くの米国民の「声なき声」なのである。



地球規模の「世界戦国時代」の幕開け



 現在、世界各国の国内においては、既成政党への国民の不満が高まり、いずれの政権も不安定化している。

 特に先進諸国では、極右ポピュリスト政党をはじめとする左右両極の政党が勢力を拡大し、政策決定への影響力も増している。

 現在の世界における対立軸は、かつてのような「リベラル VS 保守」の枠組みではない。

 2008年のリーマンショック以降、先進諸国のみならず世界中の国々が激しい「格差社会」へと転化した結果、「上下対立」を軸とした価値観の闘争が顕著になり、この対立は年々過激化の一途を辿っている。

 表面上は、「グローバリズム VS 自国第一主義」という国民の分断を伴う価値観の衝突であるが、実質的には「エリート VS 非エリート」の対立である。

 米国の場合、歴代の民主党の大統領は名門大学出のエリートが多く「知性主義」の傾向があるのに対し、歴代の共和党の大統領は軍人出身や実業家出身など、非エリートで「反知性主義」の傾向にある。

 これは、以前にも述べた「主知主義 VS 主意主義」の対立でもある。

 さらに分かり易く言えば、「ヘーゲル VS ニーチェ」の戦いなのである。

 主知主義は「普遍主義」に基づく世界を志向する為、「法の支配」による法治社会を理想とする。

 一方、主意主義は「反普遍主義」の立場で、「特殊」や「個性」にこだわり、「自分は特別で最高」という意識で物事を判断する為、「力の支配」による人治社会を理想とする。

 このように自国第一主義は、「主意主義」や「反知性主義」によってもたらされた非エリートの思想である。

 一方、グローバリズムは、「主知主義」や「知性主義」によってもたらされたエリートの思想である。

 とりわけ格差社会によってこの両者の溝は深まり、もはや和解が不可能な「国民の分断」が生み出されている。

 また伝統的に、米民主党が自由貿易主義であるのに対し、米共和党は保護貿易主義である。

 そして保護貿易主義の究極の完成形が「帝国主義」である。

 今後は 「グローバリズム VS 自国第一主義」の闘争が一層強まり、やがて「グローバリズム VS 帝国主義」の闘争へと発展するだろう。

 第2次トランプ政権は、2025年の発足直後から「トランプ関税」と呼ばれる高関税政策を課した。

 この事は、米国が自由貿易主義を完全放棄し、保護貿易主義へと大転換した事を世界に向けて明確に宣言したメッセージでもあった。

 従って世界各国は、今後は米国に対して自由貿易のルールが一切通用しない事を自覚しなければならない。

 そして米国の保護主義化は、今後世界中の国々が保護主義へと転換してゆく契機となる。

 これからの世界では、多くの国々が自国産業の保護を当然の権利とする保護主義が横行するであろう。

 現在中国は、2026年からの第15次5カ年計画の下で「自立自強」を一段と強め、重要物資の国産化を進めている。

 中国は自国内での生産を強化するとともに、軍事力を背景にした資源囲い込みを進め、資源国からの供給を確保しようとしている。

 軍事力を使って国益を拡大してゆく中国のやり方は、典型的な帝国主義政策そのものである。

 帝国主義国である米国と中国とロシアは、必然的に経済政策の進め方が似通ってくるのである。

 このように帝国主義の思想を共有する「同志」であるトランプ、習近平、プーチンの三者が、「世界を三分割して支配しよう」という方向で合意した事は必然的帰結と言えるだろう。

 謂わば、現代版の「天下三分の計」である。

 しかしながら、「三国志」の時代の「天下三分の計」が破綻したように、米中露の世界三分割も最終的には破綻するものと思われる。

 現代の世界分割においては、勢力圏内の中小の国々が、覇権大国からの軍事攻撃を受けて支配されることになる。

「米国勢力圏」においては、ベネズエラの次は、グリーンランド、コロンビア、メキシコ、キューバなどの国々が、米国からの軍事攻撃の脅威に晒されている。

 同様に「ロシア勢力圏」においては、ウクライナの次にはバルト3国が、続いて旧衛星国の東欧諸国が、ロシアから軍事攻撃されることになるだろう。

 そして「中国勢力圏」においては、台湾が中国に軍事占領された後、沖縄が中国から軍事侵略を受け、続いて日本列島も攻撃対象となる事は間違いない。

 因みに琉球は、江戸時代には薩摩藩の支配下にあったが、琉球王朝は明治維新まで清の皇帝に朝貢を続けていた。

 また日本も、14世紀に足利義満が明の皇帝から「日本国王」に封ぜられて以降、歴代の足利将軍が明への朝貢を続けていた。日本では「勘合貿易」として知られているが、実際は明の皇帝への朝貢であった。

 そのため中国人の意識では、日本も琉球も、かつて中華冊封体制における「朝貢国」であったが故に、いずれは中国に併合しなければならないとされている。

 このように現代版の「天下三分の計」においては、世界は安定するのではなく、むしろ地球上で戦火が絶える事の無い「世界戦国時代」の幕開けとなるだろう。

 国際社会において一旦「法の支配」が崩壊し始めれば、世界は一気に制御不能になり、弱肉強食の「力の支配」の世界へと転換してゆくのである。














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