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「世界の警察官」から「世界のならず者」へ
19世紀末の帝国主義を理想とするトランプ大統領
[2025.3.1]
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1901年9月6日、ニューヨーク州バッファローで無政府主義者に狙撃されるマッキンリー米大統領 |
(C)米国連邦議会図書館 |
旧文明を滅ぼし新文明を築いてきた「移民」
米国の2期目のトランプ政権が発足してから1カ月が経過した。
この間、不法移民の排除や関税の引き上げ、連邦政府改革等々、トランプ大統領が署名した大統領令はすでに100本を超えている。
こうした改革の迅速性と実行力は、政治というよりむしろ「革命」と呼ぶに相応しい。
トランプ政権が実現しようとしている事は、第二次大戦後80年間にわたって西側陣営の同盟を支えてきた共通の価値観を解消する事である。
トランプ政権の場合、米国にとっての「正義の戦い」とは、かつてのソ連のような独裁的で侵略的な勢力を抑止する事ではない。現代は、トルーマンやレーガンなどが活躍した冷戦時代とは全く事情が異なるのである。
今日の欧米諸国は、大量の移民を受け入れてきた結果、経済が低迷し、治安は悪化し、社会全体が崩壊の危機に瀕している。
さらにそうした悪循環に拍車をかけて、従来の西洋的価値観や文化を破壊してきたのが、「ウォーク・マインド・ウイルス」である。
「ウォーク・マインド・ウイルス」とは、多様性を肯定するダイバーシティやポリティカル・コレクトネス、SDGS、LGBTのような、伝統的文化や価値観を破壊する思想運動の総称である。それらは短期間で世界中の人々に悪影響を与えてきたとして「ウイルス」に譬えられている。
トランプにとって「正義の戦い」とは、大量移民と「ウォーク・マインド・ウイルス」の脅威から米国を救う事であり、それ以外の何物でもない。主敵はロシアのような外国ではなく、あくまでこれら「国内の敵」なのである。
しかも大量移民や「ウォーク・マインド・ウイルス」といった「国内の敵」は、米国のみならずEU諸国全般にも拡大し、今や西洋文明そのものを滅亡の淵に追い込んでいる。
これは決して大袈裟な話ではない。
かつて古代ローマ帝国が崩壊した最大の要因は、「移民問題」と「価値観の多様化」であった。
4世紀、北半球の寒冷化によって中央アジアの北方騎馬民族が南下した結果、もともとヨーロッパ東方に居住していたゲルマン民族が西方へと追いやられ、ローマ帝国の領域内に大量のゲルマン移民が流入した。
このゲルマン民族大移動が原因となって、やがてローマ帝国は滅亡することになった。
そして21世紀の現在、西ヨーロッパや北米大陸において大量の移民が流入し、西洋文明が危機的状況に陥っている。
ローマ帝国当時は、ゲルマン人は野蛮人と見做され、アルプスより北側は「野蛮人の土地」と呼ばれていた。
しかしそれから千数百年後には、ゲルマン人はローマ人を凌ぐ文明を築き上げたのだった。
同様に、現在では欧米諸国の人達から野蛮人と見做され、下位に扱われている移民達も、数百年後にはどれほどの文明を創り上げているか分からないのである。
そもそもアメリカ大陸の白人達も、元々は17世紀初頭にイングランド国教会から迫害され、英国から命からがら逃げてきたピューリタンの難民達の末裔に他ならない。
またその後も、1840年代のカリフォルニアのゴールドラッシュの際に、「ひと山当てよう」と野心を抱いた大量の移民達が、ヨーロッパからアメリカ大陸へと流入した。
このように、中世ヨーロッパも近代アメリカも、元はといえば難民や移民によって築き上げられた文明だったのである。
古来より、行き詰まった文明は必ず滅んできた。
西洋文明も例外ではない。
アメリカ大陸の歴史を振り返るならば、過去1万3千年以上もの間、ネイティブ・アメリカンが居住してきた大陸であった。
一方、アメリカ大陸に白人移民が流入し始めたのは17世紀以降であり、最初の入植者ピルグリム・ファーザーズが1620年にメイフラワー号に乗ってプリマスに上陸してから僅か400年しか経っていないのである。
1万年以上のネイティブ・アメリカンの歴史から見れば、400年などはほんの一瞬の過渡期に過ぎない。
数十年後あるいは数百年後の北米大陸が、現在流入している移民達の子孫によって統治されることになったとしても、何ら不思議ではないだろう。
また同様の事は、ヨーロッパにおいても当て嵌まる。
今日、人類滅亡説が巷間に流布されているが、おそらく滅亡するのは人類ではなく、近代以降の西洋文明であると考えられる。
歴史上、旧文明を滅ぼし、新文明を創造してきたのは、常に「移民」であった。
ただし文明が滅びる際には、必ず抵抗勢力によって断末魔のあがきが展開されることになる。
そうした意味では、現在の米国のトランプ政権は、今やマイノリティになりつつある「白人中心社会」の最後の抵抗の象徴であると言えよう。
米国とEU諸国との確執
米国第一主義や移民排斥を唱えるトランプは、EU諸国の現政権がいずれも「ウォーク・マインド・ウイルス」に感染していると見做している。
そのためトランプ政権は、欧州各国の現政権よりもむしろ欧州の極右勢力こそが「真の盟友」であると認識しているのである。
トランプが最も信頼する側近であるバンス副大統領が、先日ミュンヘンで極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」共同党首のアリス・ワイデル氏と会談する時間を作った一方で、ドイツのショルツ首相との会談のために時間を割かなかった事が、トランプ政権の立場を明確に物語っている。
さらにバンス副大統領は、訪独中に「AfDのような政党こそドイツ政府の政権を担当するべきだ」と演説した。
またトランプ政権の一員であるイーロン・マスクも、AfDの熱心な支援者である。
現在トランプ大統領は、ウクライナ問題について、明らかにゼレンスキーや欧州首脳の頭越しに、プーチンと取引をしようとしている。
その理由の1つは、トランプ政権の世界観やイデオロギーが、ウクライナのゼレンスキーよりも、むしろロシアのプーチンの価値観に親和性を持っている為である。
プーチンはトランプと同様、多様性を嫌悪する保守的な価値観の持ち主であり、自国第一主義者であり、白人中心主義者でもある。
それに対し、ウクライナのゼレンスキーは、トランプにとっては「ウォーク・マインド・ウイルス」に感染したEU諸国の政権と同様の「敵」に他ならない。
EU諸国が、いずれも大量移民や「ウォーク・マインド・ウイルス」を容認している以上、トランプにとって「EU諸国は米国の敵」なのであり、従って「ウクライナも米国の敵」なのである。
そのため、間もなく開かれるであろうトランプとプーチンによる停戦交渉によって、ウクライナには絶望的な結末しか残されていない。
今後ウクライナは、将来的な安全の保証も無い状態で、領土の喪失を受け入れるよう求められる可能性が高い。一方、それが受け入れられない場合には、米国からの支援が一切無い状態で、終わりの見えない戦いを続けるしかなくなる。
トランプ大統領にとって最優先の政治的課題とは、決して西側の自由民主主義の価値観を守る事ではなく、あくまで大量移民を排除し、「ウォーク・マインド・ウイルス」を打倒することなのである。
因みに今回の停戦交渉は、単なるウクライナ戦争の処理だけでは終わらない。
なぜなら、そもそもプーチンが開戦に踏み切った最大の理由が、旧ソビエト連邦の領域内にNATO軍が進駐してきた問題に起因している為である。
従ってウクライナ戦争の停戦交渉は、必然的に今後の欧州全体の勢力範囲についての交渉にならざるを得ない。
その際、プーチンにとって絶対に譲れない停戦条件は、旧ソビエト領域全体からNATO軍を完全撤収させる事にある。
そして米国第一主義者でモンロー主義者でもあるトランプ大統領は、これに応じるものと予想される。
そればかりではなく、国家予算削減を目指しているトランプ大統領は、バルト三国や旧東欧地域のみならず、さらに欧州全域から米軍を撤退させる事にも同意する可能性がある。
その結果、EU諸国としては、もはや米国を信頼出来る「同盟国」とは見做せなくなる事は明らかである。
しかもトランプ政権は、EU諸国に対して明らかな敵対姿勢の外交スタンスを取っており、今後はEU諸国にとっても米国が「敵国」になる事が避けられない状況にある。
現にトランプ政権は、欧州の民主主義を脅かしているだけでなく、グリーンランド問題では欧州の領土さえ脅かしているのである。
欧州の指導者達が、EUの相互防衛条項を、ロシアに対してではなく、米国に対して適用する時代が来る事など、果たして誰が予想し得ただろうか。
だが、それが新たな世界の現実なのである。
今後のEU諸国は、米国との関係を根本的に転換せざるを得なくなる。
そこでEU諸国は、欧州における米国の防衛力が完全に撤去される日に向けて、早急に対応する必要に迫られる。
かくしてEU諸国は、NATOから米国を除外した形での軍事同盟の再編を余儀なくされるであろう。
米国との関係を解消した欧州軍事同盟の成立は、それ以降の世界における大きな危機的要因になる事は間違いない。
時代は確実に、19世紀的な「帝国主義の時代」へと逆行を始めつつある。
権力者の精神構造
トランプ大統領は、1月20日の就任演説において、「米国は今再び自国を成長する国、富を増やし領土を拡大する国と見なす」と宣言した。
トランプ大統領はすでに就任前から、米国が「グリーンランドを手に入れる」あるいは「パナマ運河を取り返す」さらに「カナダは米国の51番目の州になるべきだ」などと主張していた。
また2月には、パレスチナ自治区ガザに対する所有権まで宣言している。
このように1期目とは異なり、2期目のトランプ政権が、やたらと領土獲得を目指す拡張主義政策へと転換した事には理由がある。
それは、トランプ氏が国家の歴史に名を残す事を真剣に望むようになった為である。
権力者の場合、後世にまで自分の名を残す為に、領土獲得のような目に見える形での成果を残したいと考えるケースが少なくない。
そこには、政治家としての正しい仕事よりも、自らの功名心を優先させるという、権力者特有の異常心理が見られる。
因みに、ロシアのプーチンや中国の習近平は、今や歴史に自らの名を残す事だけを考えている為、両者とも国民の事よりも領土拡大を優先させている。
今から3年以上前の段階では、多くの政治評論家が、ロシアのウクライナに対する武力侵攻の可能性は無いと予測していた。政治の常識から考えれば、それは当然であった。
しかしながら、そうした政治の常識などは、英雄願望を持つ権力者には一切通用しない事を知らなければならない。
2022年2月のウクライナ侵攻を決定する際、プーチンは「イワン雷帝、ピョートル大帝、エカテリーナ女帝の3人から進言を受けた」と側近に語ったという。
これはラブロフ外相の証言であるから信憑性は高い。
要するに、プーチンは「天啓」に従って行動したのである。
少なくともプーチンにとっては、自らがイワン雷帝、ピョートル大帝、エカテリーナ女帝に並ぶロシアの偉大な英雄に列せられる為のウクライナ侵攻なのであった。
プーチン自身は、もはや政治家として行動しているのではなく、祖国の歴史的英雄として行動しているのである。
また中国の習近平も同様に、「台湾統一」の偉業によって、自らを中華人民共和国の建国の父である毛沢東に並ぶ存在になろうとしている。
これまでも歴代の中国当局は、「台湾は中国の一部」という建国以来の公式見解を貫いてきた。
ただし習近平の場合は、従来の指導者達とは異なり、「台湾問題は最早先送りすることが出来ない」などと主張し、「台湾統一」を必要以上に唱えづけている。
習近平にとっては、毛沢東が出来なかった事を、自分が実現させる事にこそ意味があるのである。
最早それは、中国の国家や国民の為の必要性ではなく、習近平の個人的な英雄願望以外の何物でもない。
常識的な評論家達の多くは、「中国の台湾侵攻など実際にはあり得ないだろう」と高を括っているが、英雄願望の権力者の精神構造を、彼等は知らな過ぎるのである。
平凡な頭の評論家に、異常な権力者の行動を予測する事など出来るはずが無い。
そして米国のトランプ大統領もまた、英雄願望を抱く習近平やプーチンと同種同類の存在なのであり、自らを米国の歴史的なヒーローとして後世に名を残そうとしている人物である。
従ってそうした権力者の行動を、決して「常識」で予測してはならないのである。
そのトランプが唯一、米合衆国の英雄として手本にしているのが、1897年に大統領に就任し、1901年に暗殺されたウィリアム・マッキンリーである。
トランプ大統領の手本はマッキンリー
トランプ大統領は、就任演説でパナマ運河を「取り戻す」と宣言した。
そして米国は「成長する国」「我々の富を増やし、我々の領土を拡張する国」でなければならないと付け加えた。
このように「領土拡大」を公約にした米国の大統領は、過去百年間で一人もいなかった。
トランプ以前に「領土拡大」を公約にした米大統領は、トランプが「偉大な大統領」と称賛する第25代米合衆国大統領マッキンリー(共和党)だけであった。
マッキンリー大統領は、スペインを米西戦争で打ち負かし、ハワイやグアム、フィリピン、プエルトリコを米国の領土にした。
またマッキンリー大統領は、関税をかけることにも力を入れていた。
マッキンリーの選挙戦における主要テーマは、1890年の「マッキンリー関税」に代表されるような「繁栄のための公式」として高利率輸入関税を導入することであった。
マッキンリーが大統領になる前の下院議員時代には、関税率を50%に引き上げる法案を通過させようと連邦議会に圧力をかけていた。これは、現在トランプが計画している関税率を遥かに上回る高利率である。
マッキンリー大統領の時代は、連邦政府の歳入の大部分が関税であった。当時は所得税も法人税も未だ存在しなかったのである。
そのためマッキンリー大統領は、当時の財界からも圧倒的に支持されていた。
J・P・モルガンとジョン・D・ロックフェラーはそれぞれ、今日の貨幣価値に換算して約800万ドルをマッキンリーの選挙運動に寄付していた。
マッキンリー時代は、所得税や法人税を徴収しなくても、関税収入だけで連邦政府の歳出は十分賄うことが出来、国家財政は黒字であった。
トランプ大統領は、こうした19世紀末の連邦政府予算を最大限に賞賛している。
因みにマッキンリー大統領時代の米連邦政府の職員は、全体で僅か15万人であった。
まるで絵に描いたような「小さな政府」の見本である。
一方、2025年現在の米連邦政府は、300万人を超える大量の職員を直接雇用している。
トランプ大統領が、政府効率化省を新設し、政府職員の大規模なリストラを断行しようとしているのも、マッキンリー時代を理想としている為である。
トランプ大統領が思い描く米国の新たな「黄金時代」とは、明らかにマッキンリーが統治していた「古き良き時代」に他ならない。
中国の習近平が毛沢東を手本にして毛沢東の真似ばかりしているのと同様に、トランプはマッキンリーを手本とし、事あるごとにマッキンリーの真似をしているのである。
現在トランプが次々と打ち出している様々な奇天烈な政策のネタ元は、全てマッキンリーの政策である。
19世紀末のマッキンリーの政策を、トランプがそのまま21世紀の社会に持ち込もうとするから、世界中の人々が仰天しているだけである。
マッキンリー政策を理想としているトランプは、関税が米国経済にとって良いものであると、心の底から信じている。
一方、日本の無責任な政治評論家達は、「トランプ関税は単なる外交上のディールの材料だろう」などと甘い期待をしているが、そのような事は決してあり得ない。
トランプは関税を連邦財政の中心柱として据える計画であり、関税で妥協するつもりなど全く無いのである。
事実、所得税を引き上げるくらいなら、関税を引き上げた方が良いと考えている米国民は多い。
かりに10%の関税を一律にかければ、GDP比で約1%の年間歳入が得られる。
しかも一律関税が法制化されたならば、恒久的な所得税減税の実現も視野に入ってくる。
トランプが理想とする19世紀の税制に丸ごと戻ることは難しいとしても、その理想に近づくことは可能である。
マッキンリー時代のように、所得税が無く、関税だけで運営される国家は、究極の理想国家とも言えるだろう。
因みにマッキンリー時代、民間の実業家であったJ・P・モルガンの個人資産は、米連邦政府の予算を大幅に上回っていたという。
まさにアメリカン・ドリームの黄金時代であった。
ただし、トランプが理想とする19世紀末の時代とは、まさに「帝国主義の時代」でもあった。
つまりトランプが目指している政策とは、帝国主義的な政策以外の何物でもないのである。
従って、トランプ大統領は、百数十年ぶりに誕生した「帝国主義者の合衆国大統領」である。
かりに21世紀の世界で米国が高関税大国になった場合、世界経済に及ぶ影響は深刻なものになるだろう。
それは、米国の一国の繁栄を、他の全ての諸国が支えるような世界なのである。
「世界の警察官」から「世界のならず者」へ
かつて冷戦終結後に成立した新世界秩序においては、「国境の原状変更は決して認めない」という原則が確立された。
大国が武力や威嚇によって小国を乗っ取る事は、決して許されない。
それは規模の大小を問わず、世界中の「ならず者国家」に自己正当化の口実を与えてしまう事になるからである。
そして「原状変更は認めない」という大原則に基づいて、米国は冷戦後の「世界の警察官」としての役割を果たしてきたのであった。
1990年にイラクがクウェートを不法占領した際、米国がイラクをクウェートから追い出すために国際的な多国籍軍を結成し、1991年にイラクを武力攻撃してクウェートを解放した事は、新世界秩序のあるべき姿を示していた。
だがその後、イラク戦争やアフガニスタン戦争に伴う財政圧迫の事情もあり、2013年にオバマ大統領は、米国が「世界の警察官」を辞める事を宣言した。
それに伴って、中国は覇権主義の本性を露わにし、南沙諸島や南シナ海への領土拡張を本格的に開始した。
また2014年には、ロシアがウクライナ領であったクリミアを武力占領した。
新たな帝国主義の時代は、この頃からすでに始まっていたのだった。
世界は、米国が再び「世界の警察官」としての役割に復帰してくれる事を期待していたが、それは叶わなかった。
そして米国が再び世界の舞台に登場した時には、「世界の警察官」としてではなく、「世界のならず者」として復活を遂げたのである。
現在、トランプはパナマ運河を「奪還」し、デンマークの自治領グリーンランドを乗っ取る野望を抱いている。
その上、隣国のカナダに対しては、「米国の51番目の州になれ」と要求しているのである。
もし圧倒的に強大な米軍が、パナマやデンマークやカナダに対して派兵される事になれば、いずれの国も屈服する以外に無いであろう。
さらに重大な問題としては、こうした弱肉強食の「優勝劣敗」思想が、単にトランプ個人の信念に留まらない事にある。
トランプのような「帝国主義的人間」が、米国社会において続々と生まれている現実にも留意しなければならない。
先日、米国の共和党下院議員のブランドン・ギルは、「カナダ人やパナマ人、グリーンランド人は、米国人になる事を光栄に思うべきだ」と発言した。
連邦議会の議員がこのような発言をするという事は、その支持者達の多くも、普段から同様の発言をしている事が容易に想像出来るだろう。
それはまさに中国共産党が、満州民族、蒙古民族、チベット民族、ウイグル民族、等々の諸民族をも全て「中華民族」として一括りにして支配する論理と同一であり、帝国主義思想そのものである。
今やそのような帝国主義思想を持つ「帝国主義的人間」が、すでに米国内においても数多く存在していると考えてよい。
現在、世界の潮流は、ポスト冷戦時代でも新世界秩序でもなく、「新たな帝国主義」の時代である。
そしてそれは、トランプが理想とする19世紀の世界への逆行に他ならない。
もし今後、米国がパナマやグリーンランドの領有を強行するならば、中国は南沙諸島や南シナ海のみならず、台湾の武力占領をも実行するであろう。
だがその時には、中国の覇権主義に対して抗議する為の正当性の根拠がすでに失われてしまっているのである。
帝国主義の世界とは、「強者は出来る事を好きなだけやり、弱者は耐えなければならない事に苦しむ」世界である。
これからの世界は、ルールなき「弱肉強食」の国際社会へと突入する事が予想される。
そして帝国主義の世界は、必ず世界大戦に行き着くことになる。
過去2回の世界大戦は、いずれも大国の小国に対する攻撃が大戦へとつながった歴史であった。
第一次世界大戦は、大国のオーストリア・ハンガリー帝国が、小国のサラエボ王国に宣戦布告した事から始まった。そしてそのサラエボを援けようとしてロシアが参戦すると、それに対抗してドイツが参戦する、といった具合に、世界大戦へと拡大していった。
この第一次世界大戦の結果、「西洋の没落」がもたらされた。
また第二次世界大戦は、大国ドイツが小国ポーランドに侵攻すると、ポーランドと同盟関係にあった英仏がドイツに宣戦布告し、世界大戦へと発展した。
第三次世界大戦もまた、大国の小国に対する領土侵害を契機に勃発するものと予想される。
そして第三次世界大戦は、間違いなく「西洋文明の最期」をもたらすであろう。
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