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「トロイの木馬」を仕掛けられたトランプ政権
政権内部に根本矛盾を抱えたトランプ政権
[2025.2.1]
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米国を代表する超富裕層が列席した米大統領就任式 (2025年1月20日)
左からマーク・ザッカーバーグ、ローレン・サンチェス、ジェフ・ベゾス、スンダー・ピチャイ、イーロン・マスク |
PHOTO (C) AP共同 |
トランプ米大統領の言う「常識の革命」とは
1月20日に第47代米合衆国大統領に就任したドナルド・トランプは、就任早々、矢継ぎ早に大統領令を発令し、バイデン政権からの政策変更を図っている。
トランプは、就任当日だけで26もの大統領令に署名し、「常識の革命(the revolution of common sense)」と豪語した。
先ずトランプの基本路線は「米国第一主義」であり、他国との協力などは二の次である。
またトランプは、二国間の「ディール(取引)」を好み、条約や同盟に縛られる事を極度に嫌うという特徴がある。
トランプが大統領に就任した初日、米国は地球温暖化対策の国際的枠組みであるパリ協定から離脱した。
二酸化炭素の排出量が、中国に次いで世界第2位の米国が何の対策もとらず、石油や石炭の増産を図り、化石燃料の使用を増やせば、地球温暖化は一層深刻化し、米国のみならず世界全体に被害をもたらすことになる。
だが、「地球温暖化の原因は、二酸化炭素の排出ではない」と信じるトランプにとっては、パリ協定そのものが米国を縛る足枷に他ならないのである。
さらに米国は、WHO(世界保健機関)からも脱退した。
感染症には国境が無い為、国際的協力なしには感染症との戦いは無理である。従ってWHOからの脱退は、米国民の健康にとっても打撃となるはずである。
しかしトランプにとっては、WHOこそが人類削減計画の実行者であり、世界中に殺人ウイルスを拡散させている元凶に他ならないのである。
またトランプは、国籍について「出生地主義」を見直し、不法移民の子供などには国籍を与えないことを明言した。
因みに出生地主義は、米合衆国憲法修正第14条第1節で定められている。
そのため、ニュージャージー州、マサチューセッツ州など22の州とサンフランシスコ市、ワシントンDCは、大統領の決定が無効だとして訴訟を起こしている。
だが、日本のように血統主義を採用し、出生地主義をとっていない国は、世界にいくつも存在する。
国籍を出生地主義から血統主義へと変更する事自体は、国際法上、全く問題が無いのである。
さらにトランプは、バイデン政権下の多様性・公平性・包括性政策を終わらせると宣言した。
トランプは、性的マイノリティやLGBTを敵視し、連邦政府が認める性別は「男性(male)」と「女性(female)」の2つだけであると定義した。
他にもトランプは、4年前の議会乱入事件で起訴された約1500人に恩赦を与えた。
その中には、禁固20年程度の判決を受けた極右団体の指導者達も含まれている。
因みにロイター通信の世論調査では、58%の米国民がこの恩赦に反対しているという。
支持政党を問わず、明らかに刑法に抵触する破壊活動をした重罪犯の釈放に対し、多くの人々が反対するのは当然である。
しかしトランプにとっては、彼等は犯罪者ではなく「愛国者」であった。
だがこのような形での恩赦は、国内に新たな分断を生むだけである。
一方、貿易については、カナダ、メキシコ、中国、EUなどに対し、大幅な関税を課すとしている。
しかしながら、「国内産業を守り、発展させる」というトランプの目的は、保護関税によっては決して達成出来ない。
関税が高くなれば、輸入品の価格が高騰し、物価高をもたらし、消費も減速することになる。
米国経済にとっては、何らプラスにならないのである。
高い関税を課す理由として、トランプは「これまで長年にわたって、米国は世界中から食い物にされ、搾取されてきた」と語っている。つまりトランプは、「世界は米国の敵」と見做しており、世界に対して報復を開始しようとしているのである。
だがその場合には、「世界」にとっても「米国が敵」になるのである。
こうした事を、果たしてトランプは理解しているのだろうか?
当然、世界中の国々が報復関税などの対抗措置を執ることになる。
その結果、世界経済は収縮し、米国も多大な経済的損失を被る結果になるだけである。
トランプの言う「常識の革命」とは、実際には「非常識の革命」に他ならない。
「トランプ革命」のタイムリミットは1年9カ月
トランプ大統領が、何故これほどまで改革を急いでいるかと言えば、「実質的な任期は来年の11月まで」という現実をよく自覚している為である。
因みに「大統領令」は議会の承認が不要であるが、予算承認権は議会にある為、連邦議会が大統領令の執行に必要な予算を通さなければ、大統領令は実質的に無効になる。
現時点においては、議会の上下両院で共和党が過半数を占めている為、大統領令のほぼ全てが実行可能である。
しかしながら、もし次回の中間選挙で議会の過半数を民主党に奪われた場合、大統領令の多くが実行出来ない事になってしまうことになる。
2026年11月に実施される中間選挙では、トランプ政治に対する反動が生じると予想される為、連邦議会の議席数が民主党に逆転される事を覚悟しておかなければならない。
そのため、トランプが大統領として本当にやるべき仕事を成し遂げる為に残された年月は、4年間ではなく、事実上は1年9カ月しか無いのである。
トランプ政権は、こうしたタイムリミットの問題を抱えている。
トランプは、4年後には確実にホワイトハウスから去っているし、1年9カ月後の中間選挙で敗れれば、残りの任期はレームダック化して何も出来なくなる。
しかも現状を見る限り、本当にトランプが大統領として活躍出来るのは、せいぜい半年か、長くて1年くらいであると考えられる。
かつてトランプは、ジョー・バイデン大統領のことを「老いぼれバイデン」と呼んで若さをアピールしていたが、今回の就任では、4年前のバイデン大統領よりも5カ月高齢の78歳7カ月という史上最高齢で大統領職に就いている。
バイデン大統領は、在任中に認知症が顕著となっていたが、トランプも同じ轍を踏まないとは限らない。
トランプは、もともと気まぐれで飽きっぽい性格であるが、年齢と共にそうした性格に拍車が掛かる為、突然政策が変更されるなどのリスクも抱えることになる。
中国から送り込まれた「トロイの木馬」
政治の世界では、「絶頂の時が凋落の始まり」と言われる。
かつて圧倒的人気を誇った田中角栄首相の場合は、日中国交回復の頃が絶頂期であった。しかしその後は、オイルショックや金脈問題など、田中政権は凋落の一途を辿って行った。また退陣以降も、ロッキード事件や田中派分裂など、踏んだり蹴ったりであった。
トランプ大統領の絶頂期は、おそらく今後実現するであろう「ウクライナ和平交渉」と、その功績による「ノーベル平和賞受賞」になると思われる。
トランプは以前からノーベル平和賞に執着しているが、おそらくその原因は、2009年のオバマ大統領のノーベル平和賞受賞であると考えられる。
「オバマごときが受賞したのであれば、自分も受賞しなければ」といった強烈な対抗意識を抱いているようである。
それはともかく、ウクライナ戦争の終結によって世界に平和が戻る事は良い事である。
しかしながら「ウクライナ和平」を実現した後のトランプ政権は、混乱と凋落の一途を辿るものと予想される。
その理由の先ず第一として、トランプ政権には政策面の大きな矛盾がある。
経済政策においては、現在の米国の国民がトランプ政権に最も期待している事は、際限なきインフレの抑制である。
しかしながらトランプ大統領は、今後、全ての輸入品に対して高い関税を課そうとしている。
高い関税は、そのまま価格に反映される為、国内物価は確実に高騰する。
またトランプ大統領は、国内の不法移民を大量に排除しようとしているが、これまで製造業やサービス業の「底辺」において低賃金で従事してきた不法移民を排除すれば、モノやサービスの価格が高騰する事は避けられない。この政策は確実にインフレ圧力になる。
インフレに歯止めがかからなくなれば、FRBは金利を上げるしかなくなる。
金利が上がればドル高がさらに進行し、輸出は伸び悩む結果となる。
どう転んでも、失敗が確実な政策なのである。
トランプ政権凋落の理由の第二としては、政権内における幹部間の重大な確執がある。
歴代の米国政権が、同じ理念や政策を共有する人々の集まりであったのに対し、今回のトランプ政権の幹部人事は、理念や政策が相反する人々の集まりなのである。
例えば、中国から入国禁止措置を科されているほどの「反中国」派として知られるマルコ・ルビオ国務長官がいる一方で、中国に大規模工場を有する親中派のイーロン・マスクが同じ政権内で要職に就いているのである。
対中政策においては、ルビオ国務長官が就任早々、日本の岩屋毅外相、オーストラリアのペニー・ウォン外相、インドのスブラマニヤム・ジャイシャンカル外相を集めて、持論である「中国の脅威」を訴えていた。
だがそれと同じ時刻に、イーロン・マスクは満面の笑顔で中国の韓正国家副主席と会談していたのである。
イーロン・マスクは、テスラやXのCEOであるが、上海には巨大なテスラの工場が稼働しており、中国政府首脳とも親密な親中派の人物である。
現在、米軍の配置は、これまで中東や欧州に展開していた米軍を総撤退させてまで、対中国に全兵力をシフトしようとしている。
そうした「反中国」政権であるはずのトランプ政権の中枢内部に、親中派のイーロン・マスクが入り込んでいるという異常さに違和感を覚えざるを得ない。
イーロン・マスクは、中国政府からホワイトハウスに送り込まれた「トロイの木馬」であるという説もある。実はこれこそが、最も真実に近いのではないだろうか。
昨年の大統領選挙期間中に、イーロン・マスクはトランプ陣営に多額の寄付をした。その寄付と引き換えに、イーロン・マスクはトランプから政権中枢ポストを約束されたのである。
イーロン・マスクは、2024年7月からの約5カ月間に、少なくとも2億6200万ドル(約393億円)を、親トランプの政治活動委員会(PAC)に寄付していたことが、連邦選挙委員会(FEC)への提出資料から判明している。
トランプ政権では、イーロン・マスクは連邦政府の歳出削減や規制緩和を推進する政府外助言機関「政府効率化省」を率いることになったが、トランプへの巨額の「投資」でポストを得る形となったのである。
日本とは異なり、米国では政治家に対する寄付額に制限は無い。
かつてオバマ大統領の選挙資金の大半が中国マネーであり、その見返りとして、中国系の職員が米大統領官邸内部に多数配置されていた事はよく知られている。
このように、ホワイトハウスの様々なポストは「金で買える」のである。
理念も政策も相反する者同士が同居している状態では、政権がうまく回るとは考えられない。
特に安全保障については、イーロン・マスクが中国とビジネス上の関係を築いている事で、国防関係者の間ではイーロン・マスクに対する懸念が高まっている。
イーロン・マスクは明らかにトランプを利用しようとしているが、そのイーロン・マスクを中国が利用しようとしている事は間違いない。
米国の対中国戦略に対抗して、中国が米国政府の内部瓦解を画策して「トロイの木馬」をホワイトハウスに仕掛けてきたとしても、何ら不思議ではない。
権謀術数の歴史を有する海千山千の中国政府であれば、その程度の戦術は当然仕掛けて来ると見るべきであろう。
今後、ルビオ国務長官をはじめとした「反中国」派の政権主流と、親中派のイーロン・マスクとは、間違いなく「政敵」になる。
当初は足の引っ張り合いから始まったとしても、いずれは激しい潰し合いへと発展し、政権内部を瓦解させることになるだろう。
2023年の中国で、政敵に足を引っ張られた秦剛外相や李尚福国防相らが失脚していったのと同様の権力闘争が、トランプ政権内でも生じることになる。
今後、もし「反中国」派のルビオ国務長官やピート・ヘグセス国防長官らが、不可解な理由で次々と解任されてゆく事態になったとすれば、その背後で糸を引いているのが中国政府である事は間違いない。
根本矛盾を内部に抱えたトランプ政権
1月20日に行われたトランプ米大統領の就任式には、資産世界一のイーロン・マスクはもとより、米グーグルのスンダー・ピチャイCEO、グーグル共同創業者のセルゲイ・ブリン、米メタのマーク・ザッカーバーグCEO、米アマゾン創業者のジェフ・ベゾス、米アップルのティム・クックCEO等々、米国を代表する超富裕層が数多く列席した。
彼等は、最前列に並ぶトランプ大統領のファミリーのすぐ後、新政権の閣僚よりも前の列に座る破格の待遇だった。
トランプ大統領が就任演説で述べた「黄金時代の到来」とは、「超富裕層の超富裕層による超富裕層のための政治」の時代の到来を意味していると考えられる。
だがその一方で、底辺層の白人労働者達も、トランプを熱狂的に支持しているという現実がある。
このように、白人労働者層を中心に「反移民」を掲げる「МAGA(=Make America Great Again)」派と、超富裕層のグローバル化推進派とが、トランプ支持連合を形成している。
謂わばトランプ支持連合は、極端な「呉越同舟」状態なのである。
だが、もともと相反する勢力同士である為、すでに両者間に軋轢が生じ始めている。
その発端は、トランプがAI(人工知能)の上級政策顧問に、インド系米国人のスリラム・クリシュナンを指名した事にあった。
この事が、МAGA派からの強い反発を生んでいる。
クリシュナンとも親密なイーロン・マスクは、海外の熟練労働者に一時的な就労を認める「H1Bビザ」をさらに推進すべきとの立場をとっている。
そして現在、イーロン・マスクとМAGA派が大論争を展開し、トランプ政権内部の矛盾を露呈し始めている。
米国では、IT技術分野の熟練労働者が不足している為、シリコンバレーのIT企業各社は、「H1Bビザ」を重宝している。
だが「反移民」のМAGA派にとっては、「H1Bビザ」が外国人労働者の優遇につながる上、国内労働者の賃金が抑制されるとして、「H1Bビザ」を敵視している。
2020年には、「H1Bビザ」就労者を活用している企業の上位30社で働く外国人労働者の約60%が、同地域の同等職種の賃金の中間値を大幅に下回っていた。そしてその事が、国内労働者の賃金の抑制圧力になっていた。
因みに、「H1Bビザ」に関するトランプの考えは二転三転しており、2016年には「低賃金の労働者を得るためのプログラムだ」として「H1Bビザ」を批判していたが、現時点ではイーロン・マスクの影響で「H1Bビザ」を支持している。
このようにトランプという人物は、状況や相手次第で、コロコロと主張を変える特徴がある。
トランプには信念や思想と呼べるようなものは無く、常に一対一の「ディール」があるだけなのである。
なお、そのおかげで支持者層の幅が広くなった事も事実であろう。
上流の富裕層から底辺の貧困層に至るまで、熱烈に支持されるような政治家は、なかなかいるものではない。
ただし問題は、トランプ政権の幹部達である。
幹部同士は「ディール」ではなく、それぞれの信念や思想で動いている為、必然的に確執が生じることになる。
そして問題の「H1Bビザ」を巡っては、МAGAの熱烈な支持者であるローラ・ルーマー女史が、イーロン・マスクと鋭く対立し、激しい議論を展開している。
ルーマー女史は、自身を「誇り高き反イスラム」と公言し、「外国人労働者が担っている仕事は、全て米国人に与えるべきだ」と主張している。
さらにルーマー女史は、「我々の国は欧州から来た白人が築いた。インドから来た第三世界の侵略者によってではない」と主張し、インド人に対する「H1Bビザ」の発給に反対している。
一方、自身が移民でもあるイーロン・マスクは、「H1Bビザ」を擁護し、次のように反論している。
「私が今、米国に居て、米国を強くしたスペースXやテスラその他の何百もの企業を創ってきた多くの才能ある人々と米国で活躍出来たのは、H1Bビザのおかげだ。私はこの問題については徹底して戦うが、反対者達にはその意味すら理解出来ないだろう」
南アフリカ共和国出身の移民であるイーロン・マスクが、米国で起業して成功した事をはじめ、多数の移民がシリコンバレーの起業家になったり、米企業の経営幹部として活躍している事実は、多くの移民が米国を繫栄させてきた事を証明している。
とりわけ最先端のITやAIの技術分野においては、移民への開放性こそが、米国の強みになっている事は事実である。
そして現在の米国には最先端分野のエンジニアが圧倒的に不足している、というイーロン・マスクの指摘も事実なのである。
両者のこの論争は、重要な意味を持つ。
それはトランプ政権内の本質的な対立を反映しており、その対立の深刻化が今後避けられないからである。
米国がグローバル競争に直面する中、「米国の最先端技術を向上させなければならない」という課題と、「国内労働者を守らなければならない」という課題とが、果たして両立し得るのか、という問題が根底にある。
このように、両立不可能な両極の課題を同時に抱えているのが、トランプ政権の根本矛盾なのである。
しかも決して両立し得ない相反する二極の陣営のそれぞれが、いずれも「トランプなら解決してくれる」と期待しているのである。
幅広い支持者層を持つという事は、利益相反の矛盾を抱える事と表裏一体である。
「H1Bビザ」一つをとっても、これだけの相剋を生むのである。
МAGA支持派とグローバル化推進派とは、雇用問題のみならず、国防問題や言論の自由を巡っても、180度見解が異なる。
これまで両派の唯一の共通理念は、「バイデン民主党政権を倒せ」という目標だけであった。
そしてそれが達成された今、他の諸課題に関して両派が結束する事はあり得ない。
すでに米民主党は、トランプ政権内で生じている分裂を好機として活動を始めている。
米民主党にとっては、МAGA支持派とグローバル化推進派との対立に付け込んで、共和党内の不満分子と手を結ぶ貴重なチャンスでもある。
グローバル化推進派の場合は、もともと米民主党とは共通する理念が多い。
また米民主党左派のバーニー・サンダース上院議員は、「H1Bビザ」問題について、「イーロン・マスクは優秀な人材を集めようとしているのではなく、安い賃金で使える労働者をより多く得る為に、H1Bビザを推進しようとしているだけだ」として、「H1Bビザ」を激しく非難している。
皮肉なことに、急進左派のサンダース上院議員の主張は、МAGA支持派の主張と、結論部分だけは見事に合致しているのである。
このように、極右と極左の意見が同じになる事は、実はよくある事である。
トランプ政権が、決して一枚岩ではなく、もともと分裂状態の政権である事は、今後必ず大きな混乱を引き起こす要因になるであろう。
そして大混乱の中、日本の政治・経済も、トランプ政権によって散々に翻弄される事態を覚悟しなければならない。
石破首相は「楽しい日本」を目指している場合ではないのである。
激動の2025年は、始まったばかりである。
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