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核戦争勃発の危機を孕んだ現在の世界

核戦争の発火点となり得るウクライナ戦争と台湾有事

[2023.1.15]




習近平政権に抗議の声を上げた中国民衆の「白紙革命」

統治インフラを強化させた中国・習近平政権


 昨年暮れに発生した中国民衆による抗議運動「白紙革命」は、当局の「ゼロコロナ政策」を撤回させるに至ったが、習近平政権の打倒には繋がらなかった。

 長期間にわたり続けられてきた都市封鎖と強制隔離が解除・緩和された一方で、抗議運動参加者は徹底的に弾圧された。

 昨年12月7日に中国国内で発布された10項目の指針(新十条)は、検査の義務付けと強制隔離を事実上撤回し、建物の出入口を封鎖するような措置を禁じた。かくして封鎖対象の約3億7千万人は解放されたことになる。

 それと引換えに、その後、感染者や死亡者は激増し続けた。

 予想された展開ではあるが、大半の中国国民は満足しているようである。

 たとえコロナに感染しても「自由が欲しい」というのが、中国の民衆の本音であったと思われる。

 一方、欧米の専門家の中には、今後は中国でも自由を求める声が高まると予測したり、共産党一党独裁の「終わりの始まり」だと主張する人もいる。

 しかしながら、現実はそれほど楽観的なものではない。

 中国共産党の支配体制は想像以上に強固なものであり、今回のゼロコロナ政策の実態は、党による人民監視管理体制の確立を目指した政策であり、この3年間でそれらはほぼ完成したと見られる。

 中国共産党は、この3年間にハード面でも支配体制の基盤を強化してきた。例えば、PCR検査の陽性者をQRコードでタグ付けして強制隔離するシステムは、そのまま反体制派の追跡と収監のツールとして当局に利用されることになる。

 また、封鎖した町で民家に押し入り、住人にPCR検査を強制した防護服姿のチームは、同様にいつでも反体制派の家に踏み込んで住人を逮捕・拘束出来るのである。

 さらに中国全土に建造された数多くの巨大な隔離病棟は、そのまま政治犯の強制収容所に転用が可能である。

 チベットや新疆ウイグル自治区で行われてきた事と同じ事が、今後は中国全土で行われるようになるだろう。

 このように中国共産党は、ゼロコロナ政策の名目で、AI技術を駆使した統治インフラを構築し、3年もの間、存分に試験運用を続けてきたのである。その上で、当局は都市封鎖を解き、新次元の監視管理社会を開始したのである。

 こうした状態で、体制変革を目指す人々が何か行動を始めようとすれば、悉く未然に検挙されるか、闇から闇へと葬り去られることになる。

 一党独裁の統治インフラが格段に一段と強化されている一方、中国の反体制派は分裂して容易にまとまらない問題を抱えている。

 そもそも中国の国土は広大であるため、たとえ反政府運動が一都市で起きたとしても、その地区だけで終息する。一箇所で発生した反乱が中国全土に広がることは稀である。

 それに対して中国共産党は軍と同様の全国組織であるから、直ちに対応できる。

 1989年の天安門事件当時も、民主化運動が盛り上がったのは北京だけであり、当時英国領であった香港を除けば、中国の他の地域に民主化運動は飛び火しなかった。

 結果、北京だけの「反乱」であった為、僅か数時間で武力鎮圧された。

 しかもそれから30年以上を経た今日においては、当局側と反体制側との「装備」や「インフラ」の格差はさらに拡大している。

 当局側は通信ネットや全国的な監視網をフルに活用し、反体制派の監視と摘発が極めて容易になっている。また、要注意人物の行動経路を完全に把握し、彼等の通信アクセスも簡単に規制できる。

 従って、1989年の民主化運動に比べると、今日では「反乱」は初歩的な段階で根絶されてしまうことになる。

 今回の「白紙革命」も抗議活動は散発的で、地域も限られ、まとまりを欠いていた。およそ「反乱」や「革命」には程遠い実態であった。

 今後、たとえ中国における反体制運動のニュースが全く流れなくなったとしても、それは決して中国国民が体制派になった事を意味しない。

 むしろそれは、チベットやウイグルの情況と同様、外界と隔離され、悲惨な事実が闇から闇へと葬り去られている現実であると察するべきであろう。



米シンクタンクによる台湾有事のシミュレーション


 去る1月9日、ワシントンに本拠を置く米有力シンクタンク・戦略国際問題研究所(CSIS)は、台湾有事に関するシミュレーションと予測を発表した。

 CSISの報告によると、「始まりはどのシミュレーションも同じだ。中国軍の侵攻開始後、最初の何時間かの爆撃で、台湾の海軍と空軍はほぼ全滅する」「中国海軍は、中国の強力なロケット軍のミサイル攻撃に支援されて、台湾全島を包囲し、敵の航空機と艦船が台湾に近づけないようにする」

 さらに、「中国軍の大部隊が、軍用の水陸両用船と、貨物を積んだトラックを輸送できる民生用のRORO船で海峡を渡り、台湾に上陸。同時にヘリコプターと軍用機で多数の中国兵が台湾に降り立つ」と、緒戦では先制攻撃側の中国が圧倒的に優勢になる事を予想している。

 しかしながら、数の上では中国軍は台湾軍より圧倒的に有利であっても、海峡を渡る中国船の輸送キャパシティには限りがあり、航行中にミサイル攻撃に遭うリスクもあるとし、
「そのため、どのシミュレーションでも中国軍の上陸部隊は台湾に侵入できても、兵站の要となる港湾と飛行場を押さえられず、物資の補給に支障を来して攻撃の続行が困難になるとの結果が出ている」と分析している。

 同報告書の概要は、以下のような内容である。

 中国は台湾も自国の一部だと主張しているが、台湾は長年「民主的な独立国家」であるとの立場を貫いてきた。中台を隔てるのは幅約130~180キロの台湾海峡である。

 万一、中国が台湾問題に「最も危険な解決策」でケリをつけようとするなら、この海峡を血の色に染める激戦が展開されることになる。

 中国が台湾の武力併合に踏み切るとすれば、2026年以降になる可能性が高い。

 その頃には、本格的な水陸両用作戦を実施できる準備が整うからである。同報告書では、2026年の侵攻開始が想定されている。

 侵攻初日に台湾に上陸する中国兵は約8千人、3日半後でも1万6千人と見積もられる。

 9万人が動員されたノルマンディー上陸作戦に比べ、中国軍の上陸部隊は遥かに小規模で、台湾に侵攻できたところで、最終的な作戦成功は保証されない。

 シミュレーションの結果を見る限り、台湾は中国に併合されずに済みそうだが、敵味方双方が多大な犠牲を免れない。

 台湾の経済とインフラは壊滅状態となり、大きな損失を出した米軍は、世界戦略の見直しを迫られることになる。

 短期間の戦闘であることを考慮しても、米空軍はベトナム戦争以降、海軍は第2次大戦以降、最大の損失を出すことになる。

 標準的なシナリオでは、台湾空軍は534機の戦闘機、海軍は38隻の大型艦船を失う。台湾軍の死傷者はおよそ3500人に上り、局地的な陸戦での死者がその3分の1を占める。

 米軍の死傷者と行方不明者は1万人近くに上り、シミュレーションの結果を平均すると、米海軍は空母2隻、駆逐艦や巡洋艦など20隻を失う。空軍の損失は軍用機168~372機である。

 米国と安全保障条約を締結している日本は、在日米軍の基地が中国のミサイル攻撃に遭えば戦闘に参加することになり、その場合、日本の自衛隊は軍用機122機、艦船20数隻を失うことになる。

 一方で、中国も酷い損失を被ることになる。

 侵攻作戦の失敗が中国共産党に及ぼす痛手は予想もつかない。共産党の一党支配の継続も危うくなると予測される。

 中国海軍は大きな被害を被り、水陸両用部隊の中核は失われ、何万もの兵士が捕虜となる。

 中国は軍用機161機、艦船138隻を失う。戦闘による死傷者は7千人に達し、その3分の1は死者である。それとは別に1万5千人が渡航中に海に落ち、その半数が溺死する。捕虜となる兵士は3万人を超える。

 多大な犠牲は避けられないにせよ、米軍主導の防衛軍が侵攻軍を撃退するには次の4つの条件が不可欠である。

①台湾が抗戦すること。

 台湾は小規模の兵器や部隊を全土に配備する「ヤマアラシ戦略」でゲリラ戦を展開することが必要である。

 欧米が物資を支援する「ウクライナ・モデル」は台湾には通用しない。中国が台湾を包囲し、何週間、あるいは何カ月もの期間、孤立させる恐れがある為である。台湾は侵攻に備えて、必要な物資を十分に備蓄しておくべきである。

②米国が即座に、かつ直接的な介入に踏み切ること。

 米国には台湾を守る法的義務は無いが、米国による迅速な直接介入が必要不可欠である。米国が介入に手間取ったり、中途半端な介入をしたりすると、防衛は一層困難になる。その場合、米軍の死傷者が増え、中国が占領体制を強化し、戦闘がエスカレートするリスクが高まるだろう。

③米軍が日本の基地から作戦を展開できること。日米は外交と防衛の絆の深化に優先的に取り組む必要がある。

④中国の水陸両用作戦を妨げるために、米軍に対艦ミサイルの備蓄が十分にあること。

 この4条件が整えば、戦争の早期終結は可能である。

 たとえ緒戦で台湾軍がやられても、台湾の人々が降伏を拒んで徹底抗戦すれば、中国の占領はせいぜい数カ月程度で終わる。

 以上がCSIS報告書の概要であるが、同報告書は次のように結論を示している。

「中国の台湾侵攻は失敗する可能性が高いが、アメリカ及び日本を含むアメリカの同盟国にとって、それは高い代償を伴う勝利となるだろう」

 戦略国際問題研究所(CSIS)は、とりわけレーガン政権以降、脚光を浴びてきた米シンクタンクであり、その分析力は優れているが、今回の報告書については、些か楽観的に過ぎる印象がある。

 中国が最も重要な「核心的利益」として位置付ける台湾併合を、核兵器も使用せずに断念するなどという前提で論を組み立てても、所詮は机上の空論でしかない。

 中国は、核兵器を抑止力目的で保持しているのではなく、あくまで使用目的で保持している国であるという事実を忘れてはならないのである。



核戦争も辞さない覚悟のロシアと中国


 間もなく2年目に突入しようとするウクライナ戦争は、単なる領土や国境線をめぐる戦いではなく、西側諸国とロシアとのイデオロギー闘争でもある。

 具体的には、人権や自由や多様性を認める西側的理念と、権威主義や専制主義に基づき個人を監視・抑圧するロシア的理念との闘いである。

 それ故に、ウクライナは西側諸国から大勢の支援が得られているし、一方、ロシアはロシアで「反欧米」の権威主義的諸国からの期待を集めている。

 ロシアはウクライナ侵攻以降、日に日に追い込まれて、取り返しがつかないほど多くのものを失っている。

 この先、ウクライナ戦争の「出口戦略」としては、2つのケースが想定される。

 第1のケースは、「西側諸国によるロシア占領統治」である。

 これまで傍観していた西側諸国が、食糧不足やエネルギー不足に痺れを切らせて直接介入し、ウクライナと共にロシアを占領統治するというシナリオである。

 しかしながら、過去の戦争において占領統治が成功した例は稀であり、ロシアが第二次大戦直後の日本のようにスムーズに占領を受け容れる事はまずあり得ない。

 第2のケースは、「21世紀版のロシア革命」である。

 ロシア国内において反戦運動や反体制運動が高揚し、西側諸国がそれをバックアップしてプーチン政権を打倒し、西側寄りの新政権を樹立するというものである。

 ただし、ロシアの反体制派も中国の反体制派と同様のジレンマを抱えている。まとまりに欠ける反体制派に対して、統治権力の「装備」や「インフラ」は圧倒的優位にある。

 仮にプーチンの政権基盤が脆弱だとしても、少なくとも旧ソ連のKGB長官を歴任し、統治インフラに精通しているプーチンであれば、現在の中国当局に負けず劣らずの諜報網をロシア全土に構築しているはずである。

 要注意人物への盗聴・尾行・暗殺等は日常茶飯事であり、反体制運動が本格化する前に、当事者達を闇から闇へと葬り去る技術は卓越している。

 ロシア当局と中国当局に共通している統治理念は、「二度と1989年の事態を繰り返さない」というものである。

 1989年は、前半は中国で天安門事件が勃発し、後半は東側諸国において民衆蜂起による社会主義政権の崩壊が連鎖的に発生した年であった。

 そのため、ロシア当局にとっても中国当局にとっても、民衆蜂起を未然に防止する事こそ、全ての政策に優先する至上命題なのである。

 そうなれば、「21世紀版のロシア革命」も期待出来ず、ウクライナ戦争はいずれの出口戦略も成立しないことになる。

 一方でウクライナ戦争は、最悪の場合、世界の破滅に繋がる可能性さえある。

 西側諸国の多くの識者達は、あくまで自分達のイデオロギーが正しいという観念に凝り固まっている傾向がある為、ロシアや中国のイデオロギーや主張を軽視している事が多い。

 この傾向は極めて危険と言わざるを得ない。

 西側諸国が推進してきたグローバル資本主義にも大いに問題があり、欧米の価値観に賛成できない数多くの国々に代わって、ロシアや中国が国際社会で闘っているという側面もある。

 そのため、かなり多くの国々が、西側と一緒になってロシアを叩く事を拒否している事実があるのである。

 ロシアや中国には、西側勢力と対峙して「世界永続革命」を闘い抜き、欧米支配の世界に取って代わるような世界新秩序を構築する長期的展望がある事を決して忘れてはならない。

 またロシアや中国には、「核戦争も辞さず」という思想が根底に実在している事を肝に銘じなければならない。

 とりわけ習近平が信奉する毛沢東思想は、「全面核戦争を戦い抜くべし」と明確に唱えている思想である。

 そのため中国との戦争を始めるに当たっては、最終的には核戦争になるとの覚悟が必要になる。

 現在進行中のウクライナ戦争においても、「ロシアが降伏するくらいなら核戦争を」とプーチンが判断する可能性は存在する。

「そんな事はあり得ない」などと西側の多くの識者は言うであろうが、独裁者の特殊な心理を、西側の価値基準だけで判断すべきではないだろう。

 現在の世界が、核戦争の危機を孕んでいるという現実から決して目を背けてはならない。













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