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持続「不可能」社会は如何にして始まったか

日本が世界に発信し得る新時代の価値観とは

[2022.9.10]




生態系と合致していた森の文明

かつて日本に存在した持続可能社会


 近年、考古学の進展によって、我が国の縄文時代の実像が解明されてきた。

 現代の世界において最大の課題とされる「持続可能社会」について考える上で、日本の精神的・文化的原点である縄文時代の持つ意義は大きい。

 縄文時代は、約1万5千年前から約2300年前まで、1万年以上も続いた世界史上類例の無い「持続可能な社会」である。

 それは「森の文明」とも称されるように、安定した豊かな生産性を有する森林の生態系と人間社会とが渾然一体となった循環系の永続的システムであった。

 森がもたらす山菜、魚介類、木の実を季節ごとに採取し、森に棲息する動物を狩猟するという、自然と人間とが共生した文明であった。

 また当時の埋葬様式を見る限り、人々がほぼ平等な社会制度を有していたと推定される。

 自然に逆らうことなく環境に適応できる性質や、分かち合いや譲り合いの「和」の文化、あるいは「足るを知る」生き方など、日本人の精神の原点は縄文文化にルーツがあると考えられる。

 かつて1万年以上もの間、持続可能な社会が地上に存在したという事実は、今後の人類社会にとっての指針となり得るであろう。

 縄文社会は狩猟採集社会であったが、「農業」も行われていた。ただし当時の農業によって作られていたのは、野菜や果物や木の実などいずれも「保存の利かない作物」であった。

 それらの作物は「蓄積不能」という意味において、肉や魚と同様のカテゴリーになる。

 そのため、縄文社会は「農業社会」ではなく、あくまで「狩猟採集社会」に分類される。

 あくまでも「農業社会」とは、保存可能で「財」としての蓄積を可能ならしめる農産物、即ち「穀物」の生産段階に達した社会のことである。

 縄文社会が崩壊したのは、稲作などの穀物栽培が大陸から伝播し、本格的な「農業社会」へと移行した事が原因であった。

 野菜や果物とは違い、米や麦などの穀物は保存が出来、「蓄積」が可能な食料である。

 こうした蓄積可能な食料は、「財力」へと転化し、社会に格差をもたらし、平等社会を崩壊させる原動力となる。

 穀物の蓄積の多寡によって、社会には貧富の差が生じ、階級が発生し、支配と隷属の関係が成立するようになった。

 日本では弥生時代がこれにあたる。

 では一体何故、人々は豊かな縄文社会を捨ててまで、わざわざ飢饉や天災のリスクを伴う農業社会を選択したのだろうか。

 それは、物々交換を媒介する「通貨」の伝来が原因であったと考えられる。


通貨がもたらした影響


 通貨の発祥は古代メソポタミアと言われており、歴史上最初の通貨は穀物であったとされる。

 それ以前は物々交換が主流であったが、通貨の流通により、商品交換の不便さが圧倒的に軽減された。

 そのため通貨システムは、メソポタミアに留まらず、周辺世界に急速に普及していった。

 歴史学の専門家によると、日本列島には、稲作に先行して、まず通貨システムがユーラシア大陸から日本列島に伝播し、通貨の便利さを知った人々が稲作を開始したと考えられている。

 1万年以上も自給自足の食料安定システムを続けてきた縄文社会においては、本来ならばわざわざ稲作を取り入れる必要など無かったのである。

 しかしながら、物々交換を簡便化するシステムとしての通貨が、その便利さ故に社会に広汎に伝播した結果、通貨を自前で調達しようとする人々が現れ、やがて国内で稲作が普及し、結果的に縄文社会を崩壊させていったことになる。

 通貨システムが社会に定着するようになると、やがて穀物よりも簡便な金・銀・銅といった金属が代替されるようになり、通貨として流通するようになった。

 依然として穀物が通貨の主流であった事は変わらないが、中東を中心に「金」や「銀」といった貴金属が、「並行通貨」として流通するようになった。

 そこで登場したのが「利子」のシステムであった。

 利子すなわち金利の発祥については、通貨と同じくらい歴史が古く、利子のシステムも古代メソポタミアから始まったとされる。

 紀元前18世紀のバビロニアのハムラビ法典では、「銀の貸付利息は年2割が上限」と定められており、また「返済に際して借り手が銀を持たない場合は、相当額を穀物で弁済しても良い」ことが記されている。

 これを見れば、すでに4千年前には、利子が社会の制度として確立していたことが分かる。


「複利」によって成立した世界


 この数千年間、世界の歴史を動かし、国家を凌駕する富の実現を可能にしてきたのは、「複利システム」であった。

 アインシュタインが、「複利」を「人類最大の発明」と言った事はよく知られている。原子爆弾の原理は、この複利システムに基づいている。

 複利とは、一般に「雪ダルマ式」と言われる方法で、生じた利子を元金に加算した額を次の元金として利子を発生させ、それを繰り返す為、債権額(あるいは債務額)は幾何級数的に拡大していくことになる。

 何世代にもわたり富を蓄積した富裕層は、必ずこの複利システムを使ってきた。

 例えば、年1割の利率として複利で資金を増加させ続けたとすれば、50年後には117倍、100年後には13780倍になる。

 もし古代バビロン商人のように、年2割の複利で貸付けるならば、50年後には9千百倍に、100年後には、8281万7974倍にまで債権が増大することになる。

 中世ヨーロッパの高利貸しは、年利2割を超えていたそうであるから、親子3世代にわたって高利貸しを続ければ、確実に大財閥になれた事になる。

 こうした複利システムこそが、「支配-隷属」社会を形成するメカニズムである。

 少数の富裕層が、何もしなくとも倍々ゲームで豊かになってゆくのに対し、大多数の債務者達は複利システムによってますます借金が膨らみ、困窮を極めるようになる。

 中間層は没落して貧困層へと転化し、一握りの富裕層と大多数の貧困層とに社会は二極分化してゆく。

 仮に債務者が現金で債務を弁済し得なくなった場合は、「差し押さえ」などの形で、破産して物納することになる。

 その際、個々人のレベルでは「有形物」で弁済しているが、これを地球レベルで俯瞰すれば、世界中の債務相当分の莫大な「資源」が、毎日地球から削り取られていることになる。

 そもそも「元金を超える利子」というものは空想上の観念に過ぎないのであるが、そうした架空の存在を実体として調達しようとするならば、環境をさらに破壊して、資源を掘り出したり、森林を伐採したり、動物を獲り尽くすなどしなければならなくなる。

 即ち、「複利」が地球を食い潰すシステムになっているのである。

 すでに地球という惑星の全資源の価値を超過する「債務」が計上されているのが、現在の世界経済の実態である。

 今や、人類社会に「利子」が誕生してから約4千年、近代的な金融システムが成立してから約400年を経た現代世界は、地球環境の破壊と世界的貧困層の増大によって、崩壊の危機を迎えている。

 複利という不可思議なシステムは、明らかに異常なシステムであるが、こうした制度に異常さを感じさせない社会こそ、遥かに異常と言えるだろう。

 1万年以上もの間、持続可能な社会を続けられた縄文社会と、一体何が違っていたのだろうか。


人類社会における増殖し続ける癌細胞


 人間の身体は、細胞が日々新しく入れ替わっており、新陳代謝によって維持されている。

 人体は約60兆個の細胞で成り立っているが、1日に約1兆個の細胞が死滅し、同時に同じだけの細胞が分裂している。

 不要になった細胞が死滅すると、隣接する元気な細胞を分裂させて2個にして、その1つを無くなった細胞に入れ替えることで、機能は維持されてゆく。

 このようにして、皮膚細胞は約1カ月、筋肉細胞は約2カ月、血液の細胞は約4カ月、骨の細胞は約2年をかけて、全く新しく生まれ変わっている。

 こうした新陳代謝が自然の摂理である。

 しかしながら、外的要因等により、自然の摂理に反した「癌細胞」という異常な細胞が稀に発生する。

 通常の人体細胞が、死滅と分裂によって新陳代謝を営んでいるのに対して、「癌細胞」は死滅することなく、体の命令に反して増殖を続ける。

 そして増殖し続ける「癌細胞」は、やがて人体そのものを死滅させてしまうことになる。

 本来、自然状態にあっては、万物は必ず劣化してゆくものである。

 物理学の世界では「エントロピーの増大」と言われるが、物質組織は時間経過と共に必ず「拡散」に向かい、異なる温度は必ず「平均化」に向かう。

 縄文社会は、全ての存在が劣化し、「いずれ消滅する物」のみによって成立していた社会であった。実はこれこそが、自然法則に合致した社会の在り方であった。

 穀物生産が伝播する以前の社会においては、食料は獲物の肉や魚、山菜、木の実など、全て保存の利かない物ばかりであった。放置しておけば腐敗してしまう為、その日の内に全て食べてしまわなければならなかった。

 また食料のみならず、衣類や道具類なども、いつまでも使えるような物ではなかった。

 したがって物々交換の際には、「そのうち駄目になる物」ばかりを、互いに交換していた。

 このように縄文社会においては、「劣化する財の交換」によって、「持続可能社会」が実現していた。

 いわばこれは、生態系に合致したシステムであったと言える。

 こうした劣化する財の交換によって成り立っていた持続可能な社会の中に、突如として癌細胞のような「増殖し続ける通貨」のシステムが外部から放り込まれてしまったのである。

 その結果、それまで「持続可能社会」を維持させてきた全てのシステムが解体してゆくことになった。

 社会もまた有機的生命体と考えるならば、人体と同様で、自然法則に合致した社会は持続し、そうでない社会は崩壊に向かうことになる。

 万物が劣化する社会の中に、通貨という「劣化しない財」が持ち込まれた事がきっかけとなり、1万年以上も持続した縄文社会は終焉した。

 あたかも、フナや鯉が泳いでいる池や川に外来種のブラックバスが投入されたことによって、池や川の生態系が破壊されたのと同様である。

 人類社会における「増殖する通貨」は、「癌細胞」に相当する。そして複利システムは、人類社会に癌細胞の大量増殖をもたらし、数千年にわたって人類社会を蝕んできた。

 もともと通貨は、商品交換に便利であることから流通したものであった。いわば経済社会の「血液」のようなもので、うまく循環するならばそれに越した事はなかったのである。

 だが、通貨に「利子」や「複利」のシステムが加わった結果、数千年を経た現在、通貨の総供給量を上回る債務総額が発生する事態にまで至ってしまった。

 当然のことながら、世界中の債務の全てを実際に弁済するには、発行済みの通貨だけでは足りなくなる為に、地球を破壊し続けざるを得なくなる。

 今や全世界は増殖し続ける通貨という「癌細胞」に完全に支配され、滅亡の危機に瀕している。

 しかしながら、極限まで矛盾が増大した時には、全く新しい次元で「真の再生」が実現するものである。

 その詳細については、次回に述べることにする。













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